ユーザビリティ評価を実践!各種行政・地方自治体サイトにおけるユーザビリティの課題と改善 〜新型コロナワクチンパスポートのオンライン申請の画面設計をやってみた〜

こんにちは、ECマーケティング株式会社でUI/UXコンサルタントをしております、伊藤です。私は普段、「売上をあげたい」「申し込みを増やしたい」というECサイト・マーケティングサイトにおけるユーザビリティの改善をお客様に提案しています。

そういった仕事をしているが故に、普段の生活の中でユーザビリティに問題を発見すると一気に仕事モードになってしまい、PCを開き、筆をとってしまうという悪い癖があります。

そんな私の気まぐれで各種行政・地方自治体サイトのユーザビリティについて、コンサルタント目線で具体的な改善案を提示するのがこの“ユーザビリティ”シリーズです。

前回の記事はこちら

ユーザビリティ上の課題と改善の方向性(地方自治体のWebサイトの事例)〜マイナンバーカード申請をしながら課題の分析をやってみた〜

さて、今回筆をとった理由はずばり「ワクチンパスポートの申請」です。

未だに国内外で新型コロナウィルスが猛威を振るっておりますが、皆さん、ワクチンの接種はすでにお済みでしょうか?

私も先日無事2回目のワクチン接種を終えまして、ようやく海外在住の家族に会いに行こうと思い立ち、ワクチンパスポート申請を行おうとしたところ、まさかまさかの「申請書を印刷して郵送」方式でした。(苦笑)
(注:東京23区のうち港区だけは電子申請に対応していました)

そこで今回は、地方自治体のデジタル行政推進担当者様・デジタル庁担当者様に「ワクチンパスポート申請のデジタル化」をご検討いただきたいという思いから、800サイト以上のユーザビリティ改善を実施してきた私が、オンライン申請の画面設計と業務フローをさくっと設計してみました。

 

目次

1.ワクチンパスポート申請を電子化した方がいい3つの理由

そもそも、「ワクチンパスポートは紙なので、わざと申請を郵送にしている」という声も聞こえてきそうなので、ワクチンパスポートの申請を電子化すべき理由について考えてみました。

1)ワクチンパスポートは主にITを使い慣れている人が必要とするので高齢の方への必要性が相対的に低い

ワクチンパスポート(新型コロナウイルス感染症予防接種証明書)は2021年8月1日現在、「現に海外渡航予定がある方のみを対象」としているようです。

港区のワクチンパスポート交付開始画面

港区のワクチンパスポート交付開始画面

つまり、私のような「仕事や家族の都合でどうしても日本と海外を行き来しなくてはいけない人」が対象になるため、比較的ITリテラシーが高いと想定される人向けの書類がワクチンパスポートだと考えられます。

そう考えたとき、比較的ITを使い慣れていない高齢の方が申請する割合は非常に低いと考えられるため、紙申請である必要性はなく、むしろ「デジタルでやってほしい…」と思う申請者が多いのではないでしょうか?

2)新しい行政申請を電子化する方が、既存の業務を電子化するよりも簡単

「とはいっても、紙で承認するフローを役所で構築してしまっているし、今更デジタルに変えられないよ。」という声も聞こえてきそうなので、業務のデジタル化についても考えてみました。

おっしゃる通り、婚姻届や転入届など、既存の業務の電子化は単なるサイト構築だけではなく、業務フローを変えなくてはならないので、電子化しづらいのもよくわかります。

一方、ワクチンパスポートの申請は、まさに新たに構築された新しい行政申請であり、業務フローもゼロから構築したはずなので、比較的電子化がしやすく、むしろこういった申請から電子化をしていかなくては、「行政の電子化」は進まないのではないでしょうか。

既存のフロート新しいフローを電子化する難易度の違い

3)他の電子申請業務と比較し相対的に簡単に導入できる(と思われる)

最後は私の仮説にすぎませんが、他の電子申請よりも簡単に導入できると考えています。理由としては必要項目を入力し、認証するだけの簡単な申請だからです。

他の申請と異なり、数値の整合性を確認したり、電話で詳細を聞いたりすることなく、「住民票との照合」だけで完結するのでは、という申請内容ではないかと(あくまで外目に見て)思っています。

以上3つの理由から、ワクチンパスポート申請の電子化が必要だと私は考えました。

 

2.実際の画面設計を作成してみた

さて、「課題指摘に終わらず、具体的な改善案を出してコンサルタントと言える」と私は考えているので、実際の画面設計を考えてみました。今回は23区で人口が最も多い世田谷区のサイトで解説しています。

BEFORE(現状):ワクチンパスポート申請「4ステップ」

まずは現状を見てみましょう。申請を思い立ってから申請完了まで「自治体ホームページを開く」→「申請書を印刷する」→「申請書に記入する」→「申請書を〒ポストに投函する」と、実に「4ステップ」を踏みます。

ワクチンパスポート申請の流れ4ステップ

そして、申請書は印刷&手書き&郵送というアナログトライアングル。自宅でプリンタがない私はここで諦そうになってしまいました。

ワクチンパスポートの印刷&手書き&郵送のみの申請書

AFTER(改善案):ワクチンパスポート申請「2ステップ」

私が考える改善案はいたってシンプルです。ズバリ「交付申請書を申請フォームに置き換えるだけ」です。データベースの構築は必要ありません。

申請書をデジタル化したらどんなフォームだろうと想像していたら、勢い余って画面設計図まで書いてしまいました(汗)

デジタル庁、または各自治体の本件担当者様、よかったら採用してください。

ワクチンパスポートの申請をデジタル化したら

さて、このシンプルな改善を行うだけで、申請のフローは4ステップから2ステップに短縮され、私のように手元にプリンターも切手もない申請者にとっての手間は、移動時間も含めおそらく2時間ほど短縮されるはずです。

 

3.業務フローについて

では、前に述べた申請フローにした場合、業務フローはどうなるのでしょうか。

BEFORE(現状):紙で確認
おそらく今の申請フローの場合、ご担当の方は、各市区町村ごとに郵送で届いた申請書を毎日紙で確認しているでしょう。2人で手分けしてやろうもののなら、それこその接触による感染リスクもありますよね。

AFTER(改善後):オンラインのデータを確認
フォームをオンライン化した場合、フォーム入力されたデータを、各市区町村の各担当者(郵便を確認するのと同じ人)が、メールボックスで確認し、住民票など何らかの書類と照合する業務フローでスッキリ解決できます。

このフローであれば、新たにデータベースを構築する必要はなく、同じ担当の方で業務可能であり、むしろ少ない人数で接触も少ない作業になるのではないでしょうか。

また、物理的な紙を印刷、封筒に入れて、それを配達員の方が運ぶという課程でCO2が発生しますが、それが電子化することによって回避されるので、SDGs的な観点でもよいはずです。

 

4.デジタル庁担当者様へのご提案

デジタル庁のWEBサイトを見ると、こんな文言がありました。

「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」

まさしく、私もそれを実現すべきと思います。

ぜひ、私のような紙申請に慣れておらず、申請書を印刷するのも郵便局に行くのも時間がかかる人向けの申請から変えていきませんか?

ワクチンパスポート申請においては、申請フォーム(受信用メールアドレスを各自治体が設定できるように)を作成し、画面設計案と業務フロー案とともに各自治体に提供する、という簡単な作業です。

また、今後も新しい業務フローが発生する際には、ぜひ電子申請をまず検討していただきますよう、一納税者として、また行政の電子化を影で応援するものとして、お願い申し上げます。

 

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。私が海外在住の家族に会いに行くためにワクチンパスポート申請をしようとしたはずが、またまた筆をとって、実際の画面設計までしまいました。大変失礼しました。

今この記事を読みながら、「そういうことあるある」と思っている事業会社のマーケターの皆さん、ひょっとしてあなたの会社のサイトも、ユーザー目線で「使いにくいな・・・」と思わせていませんか?

実は自分の会社のサイトでも、ユーザー目線が欠けているがゆえに、同じような課題を大事なお客さまに突きつけてしまっているかもしれません。

ECマーケティング株式会社では、客観的な目線でマーケティングサイトの改善点を洗い出し、CVR、ひいては売り上げを上げる「ユーザビリティコンサルティング」を提供しています。すでに課題を感じているお客様も、まずサイトを客観的に見て欲しいというお客様も、ぜひまずはお問い合わせください。私が直接コンサルティングさせていただきます。

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もちろん、この記事をご覧になったデジタル庁や地方自治体のご担当者様からのお問い合わせも、お待ちしております!

 

 

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この記事を書いた人

2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。Googleアドワーズが生まれる前からWEB広告を担当、当時のコンバージョン計測は手集計。2006年にECサイトを50サイト運営しながら、サイトユーザビリティ改善の重要性に気づき、ヤコブ・ニールセンのホワイトペーパーを入手して、日本のサイトに実際に導入しCVRが向上することを発見。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。

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