ユーザビリティ上の課題と改善の方向性(地方自治体のWebサイトの事例) 〜マイナンバーカード申請をしながら課題の分析をやってみた〜

こんにちは、ECマーケティング株式会社でUIUXコンサルタントをしております、伊藤です。突然ですが皆さん、マイナンバーカードの申請はお済みでしょうか?

私は普段、「売上をあげたい」「申し込みを増やしたい」というECサイト・マーケティングサイトにおけるユーザビリティの改善をお客様に提案しています。

そこで今回は、「マイナンバーカードを申請してほしい」と国からご要望をいただいたと仮定して、自分のマイナンバーカード申請をしながらユーザビリティ上の課題を分析。改善策を考えてみました。

目次

1.ことのはじまり

私が「マイナンバーカードを申請しよう」と思い立つタイミングは突然やってきました。普通の人であれば、転職で身元証明をしなければ…とか、助成金の申請に必要だ、といった理由で申請しようと思うのかもしれませんが、私は特に理由もなくふと作ってみようと思いました。

正直なところ、手続きをどうやるかということは知りませんでしたが、オンラインで申請できそうというのはニュースか何かで見た気がするので、在宅ワークの休憩時間10分ほどでできるだろう、そう高をくくっていたのが、その後の悲劇につながりました…。
 

2.実際にマイナンバー申請にチャレンジ!でもなぜか申請ができない…

私が思い立ってから、まずは、Googleで「マイナンバーカード申請」と検索してみました。そしてPCで見ていたので、「パソコンで」をクリックしました。

そして「PCで申請」を選択。

中に入っていくと、該当らしきメニュー「オンライン申請用サイトはこちら」とあるので、おお、親切でわかりやすいなと思いながらクリックしました。

そしてここで最初に「?」が浮かびました。表示は「申請書IDを入力してください」となっています。

さて、申請書IDとはなんでしょうか?

その存在を知らない私は、右上の「よくあるご質問」から申請の手順を見ると、なるほど、「交付申請書を受け取る」が「オンライン申請」の前に必要なのだとわかりました。

しかし、ここで2回目の疑問が浮かびあがります。交付申請書はどこで受け取ればいいのでしょうか?

こんなことではめげない私はGoogleで「マイナンバーカード交付申請」と検索しました。しかし、出てきたのは先ほどと同じサイトです。

そしてさっきと同じ疑問…の無限ループになってしまいました。そうこうしている間にリモートワークの休憩時間が終わり、申請できませんでした。マイナンバーカード申請って予想以上に難易度高いですね。
 

3.[原因分析と改善の方向性] なぜマイナンバーが申請できないのか?

言わずもがな、マイナンバーカードは私のような中年はもちろん、若者やお年寄りなど、多くの国民に広くあまねく必要な手続きです。しかし、通常想定されるユースケースにおいて、わずかこれだけの手続きで3回も行き止まりになってしまいました。

ユーザビリティのコンサルタントとして、改善策を考えずにはいられなかったので、お客様(設計者)が国だとして、まずは課題と原因の究明をしてみようと思います。なお、課題に基づく具体的な改善イメージは次の章で書きます。
 

課題①「用語が初めて登場するにも関わらず補足がない」

先ほどの手続きで、「申請書ID」「交付申請書」など、私自身が初めて目にする言葉がありました。しかし、それに対する説明がなく、サイト設計者は”ユーザーが手続きの全体を知らない”という前提を見落としているのではないでしょうか?

課題①「用語が初めて登場するにも関わらず補足がない」
→原因:ユーザーが手続きの全体を知らない状態で入ってくるという前提が欠けている

この課題に対しての改善の方向性としては2つです。

改善の方向性1)「申請書ID」にヘルプをつける(申請書IDとは?)
改善の方向性2)「申請書ID」を取得するための手続きページへのリンクを貼る

ユーザー目線に立てば、きっとこういった理解の補足をすることができるはずです。具体的な改善後の画面イメージは後ほどお見せするとして、ここでは方向性のみお伝えします。
 

課題②「次の手続きに進むリンクが設置されていない」

手続きを進めようとしたところ、手続き全体を知らない私は次にどこに進んでいいのかわからなくなっていましました。これも「みんな手続き全体を知っている」という前提でサイトを設計してしまっていることが原因なのではないでしょうか?

課題②「次の手続きに進むリンクが設置されていない」
→原因:ユーザーが手続きの全体を知らない状態で入ってくるという前提が欠けている(2回目)

2つめの課題の原因も同じく、ユーザーが手続きについて詳しく知らないことへの認識不足だと考えられますね。ここでの改善の方向性も考えてみましょう。

改善の方向性)「交付申請書を受け取る」ための手続きページへのリンクを貼る

ここにリンクが1つあるだけで、スムーズに次に進めますね。
 

課題③「ラベリングが明示的でない」

先ほど交付申請書をどこで受け取ればいいか分からなかった私は、Googleで「マイナンバーカード交付申請」と検索して、再び同じサイトへとたどり着く無限ループに陥ってしまい、休憩時間はあえなく終了しました。

実はこのとき、「交付申請書が簡易書留で届きます」という表記がページにあったものの、文字が小さく気づいていなかったのです。

課題③「ラベリングが明示的でない」
→原因:マイナンバー交付申請書が簡易書留で届きます、という説明が実際にはあるが、ラベリングが不明確なので気づきにくい

改善の方向性)ラベリングを「マイナンバーカード交付申請書を受け取る」とする

ここは、「申請書が簡易書留で届きます」という文章を読んでもらえるように、ラベリングを改善するという方向性がいいのではないでしょうか。
 

4.[厚生労働省様へご提案] すぐにでもできるユーザビリティ改善のイメージ

さて、前の章で課題と改善の方向性を示したので、具体的な画面イメージをもとに提案してみたいと思います。
 

改善画面その1)「唐突に登場する新用語「申請書ID」についての補足説明と関連手続きへのリンクを設置する。」

改善後の画面の提案1つ目は、「申請書ID」についての補足説明・関連手続きへのリンクを貼ってみました。

こうすることで、「申請書IDってなんだっけ?」とユーザーが壁に直面しても、自分で理解・解決することができます。できればページ遷移なくポップアップ表示がベストですね。
 

改善画面その2)「交付申請書を受け取っていないユーザー向けの導線を設置する」

改善後の画面2つ目として、「オンライン申請手順」のページに交付申請書の受け取り方の動線を設置してみました。

こうすることで、交付申請書ってなんだっけ?と手順を見て思った人は、申請書の再申請への手続きに誘導することができます。
 

改善画面その3)「ラベリングを、「申請方法と申請の流れ(マイナンバーカード交付申請書を受け取る)」とする」

改善後の画面最後です。交付申請書はどうやって受け取ればいいの?と思いながらこのページに入ってきた人向けに、ラベリングを明示的にしてみました。

こうすることで、このラベルが目に付いた人が内容を読み進めて「なるほど、簡易書留で届くのか」と理解することができます。
 

5.まとめ

私が仕事の休憩中にふと始めたマイナンバー申請ですが、気づいたら課題発見・改善提案を始めてしまいました。

今この記事を読みながら、「そういうことあるある」と思っている事業会社のマーケターの皆さん、ひょっとしてあなたの会社のサイトも、ユーザー目線で「使いにくいな・・・」と思わせていませんか?

実は自分の会社のサイトでも、ユーザー目線が欠けているがゆえに、同じような課題を大事なお客さまに突きつけてしまっているかもしれません。

ECマーケティング株式会社では、客観的な目線でマーケティングサイトの改善点を洗い出し、CVR、ひいては売り上げを上げる「ユーザビリティコンサルティング」を提供しています。すでに課題を感じているお客様も、まずサイトを客観的に見て欲しいというお客様も、ぜひまずはお問い合わせください。私が直接コンサルティングさせていただきます。

>>サイトユーザビリティ改善サービスはこちら<<

もちろん、この記事をご覧になった行政のご担当者様からのお問い合わせも、お待ちしております!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

お客様と売上UPという共通のゴールを目指すべく、課題のヒアリングからお力になれることのご提案まで、誠心誠意対応します。

  • 何が課題なのかざっくばらんに相談したい
  • サービスについて詳しく知りたい
  • 費用対効果のシミュレーションが欲しい

この記事を書いた人

2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。Googleアドワーズが生まれる前からWEB広告を担当、当時のコンバージョン計測は手集計。2006年にECサイトを50サイト運営しながら、サイトユーザビリティ改善の重要性に気づき、ヤコブ・ニールセンのホワイトペーパーを入手して、日本のサイトに実際に導入しCVRが向上することを発見。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。

目次