UIUX内製52.2%が「成果見えない」DX化の課題は“スキル不足”【Web担219名調査】

近年、Webサイトの成果に直結する施策として多くの企業でUI/UX改善が取り入れられていますが、その一方で実は多くの企業が部分的な対応にとどまっていることが指摘されています。

今回はサイトのUI/UX改善に取り組む実務担当者219名を対象にアンケート調査を実施し、業種・施策・課題・体制などの実態を可視化しました。

UI/UX改善に関わる多様な取り組みの現状を読み解きながら、成功に必要な視点と今後の改善ポイントを考察していきます。

アンケート回答者:サイトのUI/UX改善に取り組む実務担当者219名
アンケート回答期間:2025/5/7~2025/5/8
アンケート機関:ECマーケティング株式会社
アンケート方法:インターネット調査

目次

UI/UX改善に取り組む企業の姿とは?

UI/UX改善は、どのような業種・どのようなサイトで行われているのでしょうか。まずはUI/UX改善における現場の輪郭を明らかにしていきます。

Q1.担当サイトで扱う主な商材

UI/UX改善の対象として最も多かったのは「ITサービス・ソフトウェア」を商材とする企業で、全体の28.2%を占めました。次いで、「法人向けサービス(11.0%)」「日用品・生活雑貨(11.0%)」といった商材が上位に続く結果となっています。

IT、法人向けなど情報量が多く導線設計が重要な商材や、日用品・食品など商品単価が低く成果をWeb上で可視化しやすい商材が積極的に改善へ取り組んでいる傾向にあることが分かります。

Q2.担当サイトの種類

UI/UX改善の対象となるサイトとしては、「コーポレートサイト」(57.5%)が最も多い結果となりました。要因の一つとして、コロナ禍を境に営業体制がオフラインからオンラインへシフトした中小零細企業の増加が挙げられます。単なる企業情報の提供にとどまらず、問い合わせ・資料請求などWebサイトを通じて営業を強化したい企業のトレンドが表れていると推察されます。

一方で、「ブランド・製品サイト」(52.1%)、「採用サイト」(39.7%)も一定数見られ、コンバージョン以外の目的を持つサイトでもUI/UX向上が重視されている点が印象的です。企業活動において「成果を生む窓口」がWebサイト全体に適用される傾向が見て取れます。

Q3.担当サイトのセッション規模

サイトのセッション数を見ると、「1万~5万未満(21.0%)」が最も多く、「5,000~1万未満」「5万~20万未満」もそれぞれ約14~18%と分布が広がっています。

一方で「分からない・答えられない」が16.0%という結果になりました。アクセス状況を把握していない担当者が一定数存在しており、まずはUI/UX改善の起点となるデータの可視化や社内共有体制の整備に取り組むべき企業も多いと推察されます。

Q4.Web販促にかける年間予算

UI/UX改善を含むWeb販促にかける年間予算では、「500万~1,000万円未満(26.9%)」「500万円未満(21.9%)」が多数を占めました。中堅~中小規模の企業を中心に、限られたリソースの中で改善施策を運用している現場像が浮かび上がります。

一方で、「5,000万円~1億円未満(15.1%)」という回答もあり、大規模な予算で戦略的にUI/UX改善を進めている層も一定数存在すると推察されます。

なぜUI/UX改善を始めたのか?目的と施策の実施状況

今回の調査からは、企業が自社サイトに抱える具体的な問題意識が明確に見えてきました。ここでは、UI/UX改善がスタートする背景に注目した設問をご紹介します。

Q5.UI/UX改善の目的

UI/UX改善の最大の目的としては、「CV(売上・問い合わせ数)の増加(26.9%)」「CVR(コンバージョン率)改善(20.1%)」が上位に挙げられました。

これらは直接的なビジネス成果に関わる指標であり、改善活動が明確に売上への貢献を意識して進められていることを示しています。加えて「回遊性の向上」「直帰率・離脱率改善」など、ユーザ行動の最適化も目的として意識されていることが分かります。

Q6.実施したUI/UX改善施策

実際に行われた施策としては、「社内ヒアリング(46.1%)」「アンケート・インタビュー(44.3%)」「競合サイトの分析(41.6%)」が上位を占めました。

また、「アクセスログ解析(38.4%)」「デザイン修正(30.6%)」など、データと定性調査を組み合わせた実践的な改善活動が行われています。

一方で大規模なシステム改修やツール導入は少数にとどまっており、小さな改善の積み重ねが主流となっている現況がうかがえます。

Q7.UI/UX改善の参考にしている情報源

改善の参考にしている情報源では、「社内のアクセス解析データ(56.2%)」が圧倒的に多く、次いで「競合他社サイト(44.3%)」「自社ユーザへのアンケート・インタビュー(37.4%)」「ヒートマップ(36.5%)」が続きました。

データの活用が進んでいる一方、「社内ヒアリング(34.2%)」「自社ユーザへのアンケート(37.4%)」など、一次情報の取得を重視する企業も多いことが見て取れます。

UI/UX改善の背景

UI/UX改善に取り組む企業は増えていますが、その背景にはどのようなきっかけ、課題があるのでしょうか。今回の調査では、多くの企業が営業担当者やユーザからの声をきっかけに、サイトの使い勝手や成果の見直しに踏み切っています。UI/UX改善施策の出発点にある「なぜ変えるのか?」という視点に迫ります。

Q8.UI/UX改善を行うきっかけ

UI/UX改善を始めたきっかけとして最も多かったのは、営業担当者やサイト利用者から寄せられた「使いにくさ」の指摘でした。こうした社内外の“現場の声”が、改善のきっかけとなっている点が特徴的です。

次いで、「広告効果の低下(34.7%)」「CV減少(34.2%)」など、定量的な成果の悪化も多く挙げられています。

Q9.UI/UX改善前の具体的な課題

改善前に抱えていた課題としては、「売上・業績の低迷(45.2%)」「サイトの評判が良くない(40.2%)」が上位を占めました。「アクセス数の減少(39.3%)」や「既存客の減少(33.3%)」も多く、ユーザ行動や成果指標の悪化に対して危機感を持っていた状況がうかがえます。

また、「競合に負けた・抜かれた(31.1%)」という回答もあり、外部環境との比較で課題を実感した層も存在するようです。

UI/UX改善における外部コンサルの活用実態

UI/UX改善を自社だけで完結させるのは簡単ではありません。必要に応じて外部コンサルを活用する戦略を取る企業も多く見られます。

どの程度の割合の企業が外部の力を借りているのでしょうか。また、コンサルにUI/UX改善を外注する場合、どれほどの予算がかけられているのでしょうか。外部支援のリアルな実態を紐解きます。

Q10.外部コンサルの活用状況

UI/UX改善における外部コンサルの委託状況を見ると、「継続的に委託中(34.7%)」「スポットでの委託(32.4%)」が多く、およそ3人に2人が何らかの形で外部支援を受けていると回答していることが分かりました。

一方で「委託したことがない(21.0%)」と社内で完結しているケースも一定数存在しており、外部コンサルの関与度合いは企業によって大きく異なることが見て取れます。

予算が潤沢な企業ほど外部コンサルを活用

外部コンサルの委託状況を企業の年間Web販促予算別に整理すると、予算規模が大きい企業ほど「継続的に委託している」割合が高くなる傾向が見られました。特に「5,000万円~1億円未満」の層では69.7%が継続的に委託中と回答しており、予算が潤沢な企業ほど外部パートナーのノウハウを活用している様子がうかがえます。

一方で「500万円未満」の層では、47.9%が「委託したことがない」と回答しており、外部委託を活用せずに内製で対応している傾向が強く見受けられます。

ちなみに、UI/UX改善における外部コンサルの委託状況と、サイトのセッション数との間には明確な相関は見られませんでした。継続的な委託の有無はアクセス規模以外の要因に左右される部分も大きいと推察されます。

Q11.外部委託の費用

Q10.で「継続的に委託中」「不定期にスポットで委託している」「以前委託していた」と回答した163名に外部コンサルの年間予算を聞きました。

結果として「100万円~500万円未満」が全体の約34%を占め、「500万円~1,000万円未満(25.8%)」が続きました。1,000万円未満に収まっているケースが多数派である一方、「5,000万円以上(10.4%)」とする企業も一部存在するようです。

アクセス規模が大きい企業ほど予算あり

外部コンサルの年間予算とサイトセッション数の関係を見ると、ある程度の相関がうかがえます。特に月間セッション数が5,000未満の層では「100万円未満」が半数以上を占めており、反対に20万を超えるような企業では「5,000万円~1億円未満」といった高額帯の予算が多くなる結果となりました。サイト規模に比例して投資額も高くなる傾向が見て取れます。

一方で、5,000~1万未満の中規模層でも比較的高額な予算を組んでいるケースがあるなど、必ずしもセッション数に応じて一律ではなく、投資判断には個社ごとの方針も反映されていると考えられます。特にBtoBのサイトでは、アクセス数が大きくなくても営業機能の強化を目的にWeb販促を強化する傾向にあると推察されます。

ちなみにWeb販促予算が大きい企業ほど、UI/UX改善への外部委託費も高額になる傾向も見られました。ただし、同じ予算帯でも外部コンサルにかける金額にはばらつきがあり、実際の委託状況は体制や目的意識によって左右される側面も大きいようです。

組織内の取り組み体制と知見の整備状況

UI/UX改善を成功させるには、社内体制や知見の共有が欠かせません。

ところが今回の調査では、「専任不在」「ナレッジの分散」など、内部リソースの課題が浮き彫りになりました。

Q12.UI/UX改善の運用体制

改善活動の運用体制については、「兼任のスタッフがPDCAを回している(46.1%)」が最多となり、「専任のスタッフがPDCAを回している(27.4%)」と回答した割合はやや限定的でした。

「誰もPDCAを回していない・何もできていない(20.6%)」という回答もあり、リソースや体制構築の面でハードルを感じている企業がかなりの数存在していることが分かります。

Web販促予算と社内のPDCA体制は相関性あり

Web販促にかける年間予算とUI/UX改善のPDCA体制には、一定の相関性が見られました。特に「5,000万円~1億円未満」の予算規模を持つ企業では、「専任のスタッフがPDCAを回している割合」が42.4%と高く、反対に「誰もPDCAを回していない・何もできていない」と回答したのはわずか18.2%でした。

一方で、予算が限られる企業ほどPDCA体制が整っていない傾向にあり、「500万円未満」の層では「専任のスタッフがPDCAを回している」が20.8%、「誰もPDCAを回していない・何もできていない」が31.3%と、「5,000万円~1億円未満」の層とは正反対の傾向を見せる結果となりました。

これらの傾向は、Web販促に割く予算が少ない企業ほどUI/UX人材へのコストも削減されやすく、十分な体制を構築しにくい可能性を示唆しています。

Q13.社内の知見とガイドライン運用

社内のUI/UX改善に関する知見について、「体系化されたガイドラインがあり、運用できている(27.9%)」「体系化されたガイドラインはあるが、活用していない(26.0%)」と合わせて半数以上が「何らかの体系化されたガイドラインがある」と回答しました。

ある程度ノウハウの共有が進んでいることがうかがえる一方、「ドキュメント化されていないが共有している(23.3%)」

「知見が共有されていない(9.6%)」といった回答も一定数存在しており、ナレッジの属人化や形式知への転換の遅れが課題となっている現状が浮かび上がりました。

Q14.UI/UX改善に対する社内評価

UI/UX改善に対する社内の評価状況について「数値的成果まで含めて評価されている」と回答したのは35.6%でした。ある程度取り組みが評価されている企業が認められましたが、他方では「取り組みの姿勢のみ評価されている(31.5%)」とする回答も多く、取り組み自体は認められていても、成果指標に基づく明確な評価に至っていない企業も少なくないことが分かります。

「評価されていない(14.6%)」「評価状況が分からない(7.8%)」とする層も一定数おり、組織内での改善活動の位置づけがあいまいなケースも存在するようです。

「専任体制」ほど評価されやすい傾向

Q.12で回答したPDCA体制別にQ.14の回答を整理した結果、「専任スタッフがPDCAを回している」と回答した企業では、80.0%が「数値的成果まで含めて評価されている」と答えており、評価の質が高い傾向が見られました。

一方で「兼任スタッフがPDCAを回している」層では、「数値的な評価」が24.8%にとどまり、「取り組み姿勢のみ評価されている(48.5%)」割合が突出しています。さらに「誰もPDCAを回していない」「何もできていない」とした層においては、評価されていると感じられないケースや評価の有無自体が曖昧なケースも多い結果となりました。PDCA体制の有無がそのまま評価基準の明確さや浸透度に影響している可能性が示唆されます。

専任体制の構築が進んでいる企業では改善業務が成果として認識されやすく、社内評価につながっている様子がうかがえます。反対に、体制が整っていない企業では取り組みが社内に共有されづらく、「やっていても評価されない」状況に陥っている可能性が考えられます。

UI/UX改善の成果と今後への課題

取り組んだ結果、何が得られたのか。企業にとって最も気になるこの問いに対し、多くの担当者が手応えを感じていることが明らかになりました。一方で、具体的な改善効果を感じられない実態も見えてきました。

企業の本音から、課題解決のヒントを探ります。

Q15.UI/UX改善の成果認識

これまでのUI/UX施策について「成功している(19.6%)」「概ね成功している(36.1%)」を合わせて半数以上がポジティブな評価をしていました。

ただし、「どちらともいえない(32.0%)」も多く、成果がはっきりと把握しきれていない状況も一部で見受けられます。

外部コンサルの活用状況で大きな差

UI/UX改善に対する成果実感は、外部コンサルの活用状況によって大きく傾向が分かれました。

「継続的に委託している」と回答した層では、43.4%が「成功している」と評価しており、全体の傾向から考えても高い水準となりました。「不定期にスポットで委託している」と回答した層は「成功している」が12.7%、「概ね成功している」が60.6%と、おおよそ成功していると捉える担当者が多いものの、成功実感はやや薄い傾向が見られます。

一方で「以前委託していた」「委託したことがない」とした企業では半数以上が「どちらともいえない」と回答しており、取り組みと成果のつながりを測りきれていない実態が見えてきました。

外部コンサルを導入している企業では、施策立案や実行支援だけでなく、KPI設計や効果測定の仕組みづくりを含む包括的なサポートを受けているケースも多く、改善の成果を明確に把握しやすい環境が整っている可能性があります。

対照的に、内製のみで改善を進めている企業では、「何が成果に直結しているのか」「改善施策が有効だったのか」といった検証が困難で、結果として「判断しきれない」状態にとどまってしまっていることが推察されます。

Q16.UI/UX改善で得られた具体的成果

具体的な成果について「大きな成果あり」「一定の成果あり」と回答した割合は「売上・問い合わせ数の増加」53.9%、「CVR改善」49.3%、「回遊性・滞在時間向上」48.0%と、それぞれ多くの担当者が成果を実感していることが分かりました。

ただし、「変化なし」「以前より悪化した」「効果不明」とする回答も各項目半数前後あり、取り組みと成果を評価するためのKPI設計や計測方法が不明瞭である企業や具体的な結果が出ていない企業も一定数存在することがうかがえます。

Q17.UI/UX改善における現在の課題

現在感じている課題としては、「スキル不足(49.8%)」「リソース不足(42.5%)」「システム上の制約(44.3%)」が上位に挙げられました。人的・技術的・構造的な課題が複合的に存在している様子が見て取れます。

「効果が数字で見えにくい」といった可視化に関する悩みも31.5%に及んでおり、改善活動の効果をどう検証するかも重要なテーマになっていることが示されています。

Q18.課題解決に必要な要素

UI/UX改善を進める上で、どのような要素が必要とされているのかを尋ねたところ、もっとも多く挙げられたのは「課題の可視化(57.6%)」でした。自社サイトのどこにどのような問題があるのかを明確に捉えきれていない段階の企業が多いと考えられます。また、ある程度の改善施策を実施したものの、次に取り組むべき優先課題が見えにくくなっているといった「改善後の停滞」を課題とする層も含まれていると考えられます。いずれにせよ、改善の出発点として、状況の整理と客観的な評価が依然として強く求められていることがうかがえるでしょう。

次いで多かったのが、「アクセス解析のノウハウ(49.3%)」「PDCAを回せる体制(42.4%)」「成果につながるKPI設定(42.4%)」といった、継続的な改善に向けた運用体制に関する項目でした。単発の施策ではなく、改善活動を定着させていくための設計力と社内体制の構築が、多くの企業にとって課題となっている様子が見て取れます。

おわりに

今回の調査を通じて、複数の企業に共通して見られたのは、「UI/UX改善にはすでに取り組んでいるものの、効果の可視化や体制整備といった運用面には依然として課題が残っている」という実態でした。改善活動に一定の成果を感じている企業も多く見られましたが、一方で「評価軸が定まらない」「社内に知見が蓄積されない」「PDCAが継続できない」など、多面的な悩みも浮き彫りになっています。

こうしたギャップを埋めるには、単に「施策をやる」ことだけでなく、それを確実に成果へと結びつける設計力と実行体制が不可欠です。今回の調査結果でも、実力ある外部コンサルの必要性を感じている企業は少なくなく、専門的な視点や第三者の知見を取り入れることが、改善を次のステージへ進める有効な手段となっていることが示唆されました。

実績とノウハウを持つパートナーの力を借りながら、改善の目的整理から実行・定着までを一貫して支援してもらうことで、ようやく「取り組んだだけ」に終わらないUI/UX施策が実現します。UI/UX改善を一過性のプロジェクトとして捉えるのではなく、企業の持続的な成長につなげるための戦略的取り組みとして定着させていくことが今後より求められるでしょう。

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この記事を書いた人

Webコンサルタント
広告代理店にてメディア運営・SEOディレクション・Web広告運用を経験。
現在はコンテンツSEOとWeb担当者向けメディア『Webly』の編集を担当。

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