ECマーケティング株式会社(本社:東京都港区、代表:中山高志)は、企業のマーケティング支援で15年以上の実績を持つwebコンサルティング会社として、ECサイト担当者199名を対象に自主調査を実施しました。本記事で全調査結果をご覧いただけます。
調査の背景と目的
EC市場は拡大を続ける一方で、EC担当者の現場では「改善したいのに動けない」という構造的課題が蓄積しています。
とくに近年は、UIUX改善、CVR改善、SEO、CRM連携、データ分析など、ECサイトに求められる役割が急速に高度化しています。しかし実際の運用現場では、ECカート仕様の制約、ベンダーとの調整負荷、改修スピード不足、費用の不透明さなどが障壁となり、十分な改善PDCAを回せていないケースが増えているようです。さらに、ECカート市場の成熟により、機能差だけでは差別化しにくくなったことで、現在は「導入後の運用体験」や「改善伴走力」が重要視されるフェーズへ移行することを予想します。
本調査では、そのような環境下でEC担当者が実際に感じているストレスや、第三者支援会社への期待・懸念を可視化し、EC運営現場における構造課題を明らかにすることを目的として実施しました。
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伊藤 肇
【Webly編集部】執行役員 兼 シニアコンサルタント
2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。
2025年11月5日REAL VALUE(リアルバリュー)にプレゼンターとして出演。堀江貴文氏のYouTube ホリエモンチャンネルにて公開中。
調査概要
調査回答者:国内20代~60代の有職者(業務でECカートシステムを使用)
有効回答数:199名
調査期間:2026/3/26~2026/3/27
調査機関:ECマーケティング株式会社
調査方法:インターネット調査
本調査の回答者属性補足:
男性61.8%・女性38.2%。年齢層は30代と40代が中心(30代27.6%、40代27.1%)で、20代も15.1%存在している。若手から中堅層が主体であり、「実際に改善業務を担っている現場担当者」のリアルな課題感が反映されている点が特徴的である。一方、50代以上も約30%を占めており、意思決定層や管理職視点も一定程度含まれている。



本調査のエグゼクティブ・サマリー

監修者コメント
本調査で特に印象的だったのは、EC担当者の不満が「機能不足」ではなく、「改善を進めるための運用体験」に集中していた点です。77.8%が「運用開始後に対応品質が下がった」と感じ、73.7%が費用を高いと感じている一方で、その背景には単なる価格への不満ではなく、「改善したいのに進まない」というストレスが存在しています。ECカート市場は機能競争の時代から、運用品質・改善スピード・コミュニケーション品質が競争力となる時代へ移行していることが、本調査から見えてきました。
本調査:全19問
設問1:運用ECサイトの年商規模を教えてください。

「1億円未満」が31.3%で最多となった一方、「1〜5億円未満」23.7%、「5億円以上」が合計36.3%存在しており、小規模〜中堅〜大規模まで幅広いEC事業者が含まれている。特に10億円以上のEC事業者も22.7%存在している点から、本調査は単なるスモールECの不満調査ではなく、運用負荷やベンダー管理が高度化したフェーズの企業課題も反映していると考えられる。
設問2:これまで利用したECカートをすべて選んでください。(複数回答)

複数カートの利用経験者が多く、EC担当者が単一プラットフォームに固定されず、比較・乗り換え・並行運用を経験していることがうかがえる。これは、ECカート市場が成熟し、機能だけで差別化しにくくなっている一方、「運用性」「サポート品質」「改善スピード」が重要評価軸へ移行していることを示唆している。
設問3:ECカート業者と自社の間に第三者(支援会社)を入れていますか?

71.3%が「第三者を入れていた」と回答しており、EC運営がすでに“カートベンダーと発注側だけで完結しない構造”になっている実態が明らかになった。背景には、ECカートが単なるシステム導入ではなく、UIUX改善、SEO、CRM、広告、データ分析など多領域連携を必要とする存在へ変化していることがあると考えられる。
クロス分析①ECサイト年商 × 支援会社の有無

高年商帯ほど第三者支援会社を入れている割合が高く、特に50億円以上では第三者介在比率が高い。
EC売上規模が大きくなるほど、社内調整・改修管理・ベンダー統制が複雑化するため、“交通整理役”の必要性が増していると考えられる。一方、年商1億円未満では第三者なしの比率が比較的高く、予算制約や内製運用傾向が見える。
設問4:ECの成果、コストパフォーマンスを踏まえ、ECカートの費用についてどう思いますか。

「非常に高い」「やや高い」の合計が73.7%に達しており、多くのEC担当者がコストに対する不満を抱えている。
単純な金額への不満というより、「改善スピード」「柔軟性」「提案力」など、期待成果とのバランスに対する不満が強いと推察される。
特に、保守費用・改修費用・運用支援費用が積み上がる構造に対し、“費用の妥当性が見えにくい”ことが背景にあると考えられる。
設問5:EC運営において「カートの仕様が原因で改善が進まない」と感じることはどの程度ありますか。

SEO改善・UIUX改善・機能改善のいずれでも「非常によくある」「ややある」が過半数を占めており、多くの企業で“カート仕様が改善ボトルネック化している”実態が見える。
特にUIUX改善では約50%が「ある」と回答しており、CVR改善施策の実行スピードがカート制約によって阻害されている可能性が高い。これは現在のEC業界において、「導入済みカートをどう使いこなすか」より、「改善スピードをどれだけ阻害しないか」が重要になっていることを示唆している。
設問6:ECカートベンダーに対し、特にストレスを感じることを教えてください。

最多は「要望を出してから実装までが遅い」(48.0%)であり、EC担当者の最大ストレスが“スピード不足”にあることが分かる。次いで「見積もりが高い」「担当変更・引き継ぎ不十分」が続いており、単純な機能不足より、“運用コミュニケーション負荷”への不満が大きい。
また、「軽微な修正でも外部依頼や費用が必要」という回答も24.6%あり、改善PDCAを高速化したい現場と、従来型の受託運用体制とのギャップが顕在化している。
クロス分析②ECカート費用満足度 ×ECカートのストレス事項

「軽微修正でも外部依頼が必要」「社内調整負荷が大きい」などのストレスは、費用を高いと感じる層で特に強い。単純な月額費用より、“改善1件あたりの摩擦コスト”が費用不満に直結していることが分かる。つまり、EC担当者は「高いから不満」なのではなく、「改善が進まないのに高い」と感じている可能性が高い。
設問7:ECカートベンダーの対応に関する不満を教えてください。(複数回答)

「回答が曖昧」(44.4%)が最多となっており、単純なレスポンス速度以上に、“判断材料の不足”や“説明責任不足”への不満が強い。また、「見積もり根拠が不透明」「改善提案が少ない」も高水準であり、EC担当者は単なる作業代行ではなく、“改善パートナー”としての役割を期待していることが分かる。サポート品質だけでなく、事業理解・提案力・透明性が今後のベンダー競争力になっていくと考えられる。
クロス分析③ECカート費用満足度 ×ECカートベンダーの対応不満

費用を高いと感じる層ほど、「返信が遅い」「障害説明不足」「事業理解が浅い」などの不満が強い。これは、費用評価が単なるシステム性能ではなく、“コミュニケーション品質”に強く左右されていることを示している。
特にEC運営では、システム品質より「相談しやすさ」「改善提案」「スピード」の方が体感満足度に直結している可能性が高い。
設問8:不満の原因は担当者個人というより、カートベンダーの体制や仕組みにあると感じますか。
※設問7でいずれかの不満がある人

87%が「体制や仕組みに問題がある」と回答しており、個人担当者の能力問題ではなく、ECカート業界全体の構造課題として認識されている。これは、属人的サポート、担当頻繁変更、分業化による情報断絶など、受託構造そのものへの不満が蓄積している状態と考えられる。
設問9:構築時はサポートが手厚かったが、運用開始後に対応品質が下がった、と感じたことはありますか。

「強く感じる」「やや感じる」が77.8%となり、多くの企業が“契約前後の温度差”を経験している。
構築フェーズでは営業・PMが厚く支援する一方、運用フェーズではサポート窓口化・工数管理化が進み、改善提案や伴走感が低下していることが背景にあると推察される。これはEC支援業界において、継続運用フェーズのCX(顧客体験)が弱いことを示す結果でもある。
また、カートシステムは一度導入すると他社に乗り換えるのが容易ではない(解約ハードルが高い)ことが品質を下げる風潮を生んだ、という見方もできるのではないだろうか。
設問10:ECカートを見直す場合、動きにくい理由を教えてください。

最多は「費用が膨らみそう」(55.6%)であり、ECカートのスイッチングコストの高さが大きな障壁になっている。さらに、「カスタマイズ再構築負担」「業務フロー影響」「売上減少リスク」など、技術・運用・売上が密接に結びついているため、“不満があっても動けない”状態に陥っている企業が多い。これはSaaSの一般論ではなく、EC特有の“業務インフラ化”が背景にある。
設問11:ECカート選定時に重視した項目を教えてください

「機能の豊富さ」が50.9%で最多となり、依然として機能比較が重要視されている。一方で、「営業担当の印象」「提案資料」「運用体制」など人的・運用面の項目も高く、システム単体ではなく“伴走支援全体”が評価対象になっている。
特に実務担当者の質が19.3%にとどまっている点は、導入前には営業視点が優先されやすく、運用フェーズの重要性が後から顕在化している可能性を示唆する。
設問12:ECカート選定時に確認すべき」と思う項目を教えてください。(複数回答)

「運用フェーズの体制」(42.1%)が最多となり、導入後の運用品質が強く意識されている。また、「引き継ぎ方法」「改善要望対応ルール」「障害時初動」など、実運用トラブルを踏まえた回答が多く、“導入前にもっと確認すべきだった”という後悔がにじむ結果となっている。これはEC市場が“導入競争”から“運用品質競争”へ移行していることを示唆している。
設問13:ECサイト運営において、自社とECカートベンダーの間に立って情報整理・調整・客観的な判断をしてくれる第三者(支援会社)がいれば、業務効率やコミュニケーションはスムーズになると思いますか。

81.3%が「第三者がいた方が良い」と回答しており、EC担当者はすでに“ベンダーと発注者だけでは限界がある”と感じている。特に、情報整理・進行管理・客観評価など、PMO的役割への期待が強い。EC業界では、システム導入支援だけでなく、“運用交通整理役”への需要が高まっている可能性がある。
設問14:自社とECカートベンダーの間に第三者(支援会社)が入ることで、期待できると思うことを教えてください。(複数回答)

最多は「認識のずれが減る」(48.0%)であり、EC運営における最大課題の一つがコミュニケーションロスであることが分かる。「進行管理の安定」「見積もり妥当性判断」も高く、単なる制作代行ではなく、“意思決定支援”が求められている。つまり第三者には、“作業者”よりも“調整・翻訳・整理役”としての価値が期待されている。
クロス分析④支援会社の利用有無✕メリット

すでに第三者を入れている企業ほど、「認識のずれ削減」「進行管理安定」「妥当性判断」にメリットを感じている。つまり、第三者活用経験者ほど価値を実感している構造であり、“入れてみないと価値が見えにくいサービス”である可能性が高い。特に、制作や開発そのものより、“コミュニケーションコスト削減”が評価されている点が特徴的である。
設問15:自社とECカートベンダーの間に第三者を入れる場合の懸念を教えてください。

最多は「意思決定の複雑化」(52.0%)であり、支援会社が増えることで逆に調整工数が増える懸念がある。また、「責任分界の不明確化」も45%と高く、役割設計や責任範囲が曖昧な支援体制は逆効果になりうる。そのため、第三者支援会社には“単なる中間業者”ではなく、意思決定を軽くする設計能力が求められる。
クロス分析⑤支援会社の利用有無✕懸念点

第三者を導入済みの企業でも、「意思決定の複雑化」「責任分界の不明確化」を懸念している。つまり、第三者活用ニーズは高い一方、“設計を誤ると逆効果になる”ことも現場では認識されている。今後の支援会社には、「会議参加者を増やす」のではなく、「意思決定を軽くする」役割が求められる。
設問16:費用対効果やデメリットが解消されるならばECカートベンダーと自社の間に第三者を入れることは良いと思いますか。

81.9%が肯定的回答をしており、条件付きではあるものの第三者支援ニーズは極めて高い。つまり、EC担当者は「第三者そのもの」に否定的なのではなく、“費用対効果が見えない第三者”に懸念を抱いていると解釈できる。
クロス分析⑥カート費用満足度✕支援会社必要性

カート費用を「非常に高い」と感じている層ほど、第三者介在に前向きである。これは、“価格そのもの”ではなく、“価格に対する納得感不足”が問題であり、そのギャップを埋める存在として第三者に期待が集まっていることを示唆する。つまり第三者支援会社は、単なる外注ではなく、“費用妥当性の翻訳者”としての役割を担う余地がある。
設問17:ECカートベンダー業界全体に対して、改善してほしいことを教えてください。

最多は「迅速な保守対応」(48.0%)であり、EC担当者は日々の運用スピードに強い不満を抱えている。また、「障害対応透明性」「売上改善提案」も高く、単なる保守会社ではなく、“成果責任を共有するパートナー”が求められている。ECカート市場は、機能競争から“運用体験競争”へシフトしていると考えられる。
設問18:ECカートシステム業界またはベンダー対応について、ご自身の実感に最も近いものをお選びください。(複数回答)

「改善したいことがあってもすぐ動けない」「ベンダー対応にばらつきがある」がともに39.8%で最多となった。これは、多くのEC企業が“現状維持はできるが、改善速度が足りない”という停滞感を抱えていることを示している。大きな障害ではなく、“小さな不満の蓄積”が業界全体の課題になっている点が特徴的である。
設問19:今後、AIエージェントや生成AIの技術向上によりカート費用はどう変化すると思いますか。

最多は「運用や保守の効率化で安くなる」(39.2%)であり、多くの担当者がAIによる効率化を期待している。一方、「全体ではあまり変わらない」も28.7%存在し、単純なコスト削減には懐疑的な見方も一定数ある。これは、AIによって開発工数は削減されても、“戦略設計・改善判断・調整業務”は残ると認識されているためと考えられる。
まとめ
本調査から見えてきたのは、EC業界の課題が“機能不足”から“運用コミュニケーション不足”へ移行しているという点です。
現在のEC担当者は、単純なシステム導入ではなく、「改善をどれだけ速く回せるか」「社内外調整をどれだけ軽くできるか」を重視しています。
その一方で、ベンダー対応のばらつき、費用妥当性の不透明さ、運用フェーズの支援不足などにより、多くの企業が“改善したくても動けない”状態に陥っています。
また、第三者支援会社への期待が非常に高い点も特徴的であり、今後は“制作会社”や“開発会社”だけでなく、EC運営全体を整理・翻訳・調整できるPMO型支援の重要性が増していく可能性が高いと考えられるでしょう。
AIの進化によって開発・保守効率は今後向上すると考えられるものの、それでも「意思決定支援」「改善優先順位整理」「社内外調整」といった人間的役割は残り続けると想定されます。
今後のEC支援市場では、“何を作れるか”より、“どれだけ改善を前に進められるか”が競争力になっていくと推察されます。

