電柱点検を「ゲーム化」する挑戦。Growth Ring Grid鬼頭和希氏が描くインフラ民主化戦略¦海外進出支援インタビュー#02

日本には、まだ英語で十分に語られていない魅力的な商品・サービスを持つ企業や起業家やが数多く存在します。

これまで私たちは500社超の日本企業に対しデジタルマーケティングを支援してきました。その経験を通して見えてきたのは、日本には世界に通用するプロダクトや事業が数多くある一方で、ほとんどが「英語圏で知られないまま」終わっている、という現実です。

その状況を少しでも動かすために始めた、私たちの新しい挑戦が「Under the Radar Japan 」です。

Under the Radar Japan は日本の良いプロダクト、良いサービス、魅力的な挑戦者を多くの人に発信し
業界・業種を問わず、グローバルに挑む日本企業を支援します。今回は2人目のゲストです。

海外進出支援サービスUnder the Radar Japan の詳細はこちら

この記事の執筆者

伊藤 肇

【Webly編集部】執行役員 兼 シニアコンサルタント

2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。
2025年11月5日REAL VALUE(リアルバリュー)にプレゼンターとして出演。堀江貴文氏のYouTube ホリエモンチャンネルにて公開中。

目次

インタビュイー紹介

今回ご紹介するのは、Growth Ring Grid Pte. Ltd.(グロースリンググリッド、GRG)でCo-CEOを務める鬼頭和希さんです。

GRGは、東京電力パワーグリッドと中部電力が共同出資するシンガポールの合弁会社Greenway Grid Global(GGG)と、Web3スタートアップのDigital Entertainment Asset(デジタルエンターテイメントアセット、DEA)社が2025年に設立したジョイントベンチャーです。

東京電力パワーグリッドの社員でありながら出向という形で立ち上げに携わった鬼頭さんは、スマートフォンで電柱などのインフラ設備を撮影・投稿することで報酬が得られる市民参加型の点検アプリ『PicTrée(ピクトレ)』の開発・運営を主導し、ローンチ以来ダウンロード数を着実に伸ばしてきました。

本記事では、シンガポールでの新規事業探索の日々から生まれたアイデア、大企業とスタートアップの共創で直面した葛藤、そして電力・通信・鉄道を束ねる「巨大インフラ連合」としてアメリカ市場・NASDAQ上場を見据えるグローバル戦略について話を伺いました。

インタビュー動画はこちら

Growth Ring Grid Pte. Ltd.
https://growth-ring-grid.com/
ピクトレ公式サイト
https://pictree.greenwaygrid.global/

PicTrée(ピクトレ)公式サイト

シンガポールで出会った「電気の次」の答え

鬼頭さんが新規事業探索のミッションを与えられたのは、東京電力からの辞令がきっかけでした。

「東京電力から『電気の次となる新規事業を見つけてこい』というミッションを与えられていたためです。電気事業だけで今後10年、100年先も持続していくのは難しいのではないかという課題感がある中、シンガポールでWeb3やPlay to Earnの仕組みに出会いました」

3〜4年にわたるシンガポール滞在の中で出会ったこれらの概念が、後にインフラ点検をゲーム化するという発想の原点になったといいます。

用語説明
Web3とは
ブロックチェーン技術を活用してデータを分散管理し、特定の大企業(プラットフォーマー)に頼らず、ユーザー自身がデータを所有・管理する次世代の分散型インターネットのこと。
Play to Earn(P2E)とは
一言でいうと「遊んで稼ぐ」。ゲームをプレイし暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)を獲得し、現実の利益を得る仕組み。

「電柱を点検する」という日常業務をゲームに変える発想

アプリイメージ_PicTrée(ピクトレ)公式サイトより

新規事業のヒントとなったのは、鬼頭さんが直面した電力インフラの根深い課題でした。

「東京電力は約600万本の電柱を保有しており、日本全国では数千万本にのぼります。これまでの維持管理は、社員が現地に赴き1本1本目視で点検するのが常識でしたが、人手不足もあり非常に困難な状況でした」

と鬼頭さんは振り返ります。

この課題に対し着目したのが、点検作業そのものをゲームに変えるという発想でした。

アプリイメージ_PicTrée(ピクトレ)公式サイトより

「電柱を撮影して繋いでいくことで報酬が得られる『行動ゲーム』のような仕組みにすれば、大きなゲームチェンジが起こるのではないかと考え、インフラをゲーム化するアプリ『ピクトレ』を開発し運営しています」

参加者は撮影した電柱の数などに応じてコインを獲得でき、貯めたコインはギフト券や暗号資産に交換できる仕組みです。
ただのポイ活ではなく、ポイ活をしながら社会に貢献できる「社会貢献モデル」として多くのメディアにも取り上げられ、取材時時点でダウンロード数は12万ダウンロードに達しているとのこと。

すでに動き出す「インフラ連合」——各地での実証実績

鬼頭さんが後段で語る「巨大インフラ連合」構想は、まだ描いただけの夢物語ではありません。
ピクトレはすでに、北海道電力ネットワークやNTTグループとの連携による大規模実証、前橋市や東京都心3区、秋田県、栃木・群馬・茨城3県など全国各地の自治体での導入、さらには観光振興の文脈でのJTBとの協業など、複数のインフラ企業・自治体・観光事業者を巻き込んだ実績を積み重ねてきています。

参加者がインフラ設備を撮影して得るコインの原資の一部は、電力会社が本来支払う点検委託費から捻出される仕組みです。市民の「ついで」の行動を、企業のインフラ点検コストの削減に直結させるこの設計こそが、ピクトレというビジネスモデルの核心だといえます。

大企業とスタートアップ、対等な共創への挑戦

順調に見える成長の裏には、組織づくりでの苦労もありました。

「大企業とスタートアップの協業において非常に難しいのは、大企業側が主導権を握り、相手を下請け扱いしがち(大企業病)になる点です。私はこれを良くないと考え、相手の得意分野を尊重し、意思決定権をきちんと相手に渡すようにしました」

東京電力グループ側のGGGと、スタートアップであるDEAが対等な関係を築くため、設立から最初の1年間は毎週のように会議を重ねて議論を続けたと鬼頭さんは振り返ります。

「ここが最も苦労したポイントでした。」

行政との連携でも強い批判や意見を受けることがあったといいますが、こうした一つひとつの調整を積み重ねながら、市民・行政・企業が納得できる仕組みづくりを進めてきました。

巨大インフラ連合とNASDAQ上場という長期ビジョン

Growth Ring Grid Pte.Ltd.

各地での実証実績を積み重ねてきた先に、鬼頭さんが個人として見据えるのはさらに大きな構想です。

「私のビジョンは、この会社を『巨大なインフラ連合』にすることです。電力、通信、JRなどのインフラ企業に株主として参画していただき、それをワンパッケージにして日本からアメリカへ展開し、NASDAQなどの市場で上場を目指せる、戦える領域だと確信しています」

日本が培ってきたインフラ管理のノウハウと、AIによる画像診断技術を掛け合わせることで、競合の少ない領域で世界に挑みたいと語ります。

シリコンバレーへ、そして米国PoCへ

グローバル展開への熱量は、鬼頭さん自身のバックグラウンドとも重なります。高校3年生の時にアメリカ・ニューメキシコ州へ1年間留学した経験を持つ鬼頭さんは、先日シリコンバレーでピッチを行い、現地での確かな手応えを得たといいます。

「今年中にはアメリカで1つのPoC(実証実験)を実施したいと考えており、市民が自発的にインフラを守る世界を作るためのパートナーを募集しています。初期段階では予算がほぼなくても実績を作りたいと考えているため、興味のある方はぜひご連絡いただきたいです」

老朽化と管理コストの増大に苦しむアメリカのインフラ市場において、ゲームの力を借りて市民の力で課題を解決していく取り組みを、現地のインフラ企業や行政とともに強く推し進めたいと鬼頭さんは語ります。

さいごに

日本には、まだ英語で語られていない起業家ストーリーがあります。

今回のインタビューを通じて印象的だったのは、鬼頭さんの挑戦が単なる「アプリ開発」ではないということです。東京電力パワーグリッドという大企業に籍を置きながら、シンガポールでの新規事業探索、GGGとDEAという異なる出自を持つ組織同士の対等な共創、そして電力・通信・鉄道を束ねる巨大連合構想へ。その一つひとつが、『ピクトレ』という事業の背景に積み重なっています。

日本には、こうしたストーリーを持ちながら、まだ十分に世界へ発信されていない起業家が数多くいます。このチャンネルでは、そうした「Under the Radar」な日本の挑戦者たちを、英語圏・シリコンバレー視点も意識しながら紹介していきます。

Growth Ring Grid鬼頭和希さんの挑戦は、「日本のインフラを守って終わり」ではなく、世界の老朽化するインフラをどう救うかという問いそのものでもあります。

Under the Radar Japanでは海外進出を目指す企業様、海外投資家に自社商品・サービスをアピールしたい方を募集しています。
取材から編集まですべて無償で対応しておりますので、興味のある方は下記よりご連絡ください。

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この記事を書いた人

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【Webly編集部】執行役員 兼 シニアコンサルタント

2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。
2025年11月5日REAL VALUE(リアルバリュー)にプレゼンターとして出演。堀江貴文氏のYouTube ホリエモンチャンネルにて公開中。

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