ECマーケティング株式会社は、制作業務でAIを活用しているWeb担当者206名を対象に、現場の実態や課題意識などアンケート調査を行いました。本記事で全調査結果をご覧いただけます。
調査の背景と目的
生成AIの普及により、サイト制作業務でも構成案作成、原稿補助、競合整理、デザイン案出しなどの内製化が進みつつあります。一方で、制作スピードやコスト面のメリットがある反面、AI特有の既視感や訴求の弱さ、成果につながりにくさを感じる声も少なくありません。本調査では、サイト制作経験のあるWeb担当者を対象に、AI活用の実態、期待される効果、懸念点、そして成果を出すうえで人間側に求められるスキルを把握し、AI活用による内製化の理想と現実のギャップを明らかにすることを目的としました。
調査概要
調査回答者:国内20代~60代の有職者(web制作業務でAI活用している人)
有効回答数:206名
調査期間:2026/4/27~2026/4/28
調査機関:ECマーケティング株式会社
調査方法:インターネット調査
本調査の回答者属性補足
性別は男性が68.3%、女性が31.7%。年齢は40代が27.4%、50代が26.9%、30代が22.6%で、30~50代が中心です。職業は会社員が中心で、職種は事務系34.6%、技術系28.8%、その他17.3%となり、web制作業務でAI活用経験のある方で実施しています。

伊藤 肇
【Webly編集部】執行役員 兼 シニアコンサルタント
2000年からデジタルマーケティング業界で、大手企業のウェブマーケティングを支援。Googleアナリティクスが生まれる前、2002年にサーバーの生ログを集計して「アクセスログ解析」をレポート。2006年にサイバーエージェント、アルベルト(現アクセンチュア併合)を含め業界をリードする各社を招待して「コンバージョンアップサミット」を主催。以降、800プロジェクトのサイトユーザビリティ改善に携わる。
2025年11月5日REAL VALUE(リアルバリュー)にプレゼンターとして出演。堀江貴文氏のYouTube ホリエモンチャンネルにて公開中。
全19設問
設問1:これまでに経験したサイト制作・リニューアル関連業務をお選びください。(複数回答)

経験業務は「機能/要件の整理」「要件定義書の作成」がともに33.0%で上位となり、回答者は単なる制作実務だけでなく、上流工程にも関与している層が一定数含まれています。サイトマップ、提案依頼書、競合調査なども続いており、企画から設計に近い領域の経験者が多い構成です。
設問2:サイト制作業務における通算の経験年数をお選びください。(単一回答)

サイト制作経験年数は「1年以上3年未満」が35.6%で最も多く、「3年以上5年未満」が26.4%で続きます。極端な初心者や超ベテランに偏らず、中堅手前から中堅層が中心のサンプルといえます。
設問3:サイト制作業務において、生成AIを活用している工程はどれですか。(複数回答)

AI活用工程は「要件定義書の作成」38.7%、「競合調査の整理」37.4%が上位で、ゼロから完成物を作るよりも、整理・下準備・たたき台作成にAIを使っている実態が見えます。上流の思考補助での利用が先行しているといえます。
設問4:(活用している人のみ)サイト制作にAIを活用する目的をお選びください。(複数回答)

AI活用の目的は「制作スピード向上」55.9%が最多で、「外注費削減」45.5%、「アイデア出しの補助」42.7%、「工数削減」41.3%が続きました。品質向上よりも、まず効率化とコスト圧縮への期待が先に立っている構図です。
設問5:AI活用によって、サイト制作業務の効率はどの程度向上すると思いますか。(単一回答)

AI活用で効率が「大きく向上する」「やや向上する」の合計は79.7%に達しており、業務効率への期待はかなり強い結果です。一方で「大きく向上する」は19.6%にとどまり、劇的改善というより、現実的な時短効果として捉えられている様子がうかがえます。
設問6:AI活用によって、制作コストはどの程度抑えられると思いますか。(単一回答)

制作コストが「大きく抑えられる」「やや抑えられる」の合計は73.6%でした。効率面と同様に、コスト面でも期待は高いものの、「あまり変わらない」も17.2%あり、使い方次第では削減効果が限定的だとみる層も一定数います。
設問7:AIを活用したときに、感じる懸念点をお選びください。(複数回答)

懸念点は「文章やデザインに既視感がある」46.0%、「ブランドらしさが弱い」45.4%が特に高く、AI活用の課題は法務リスクよりも、差別化やブランド表現の弱さに集まっています。効率化のメリットがあっても、成果物の個性や独自性に不安を抱いていることが分かります。
設問8:AIで生成されたサイトやデザイン、画像に対して、「AIっぽさ」を感じたことはありますか。(単一回答)

「AIっぽさ」を「よく感じる」「たまに感じる」の合計は87.7%で、大半が何らかのAI特有の違和感を認識しています。AI活用は一般化しつつある一方で、仕上がりに人の手が入っていない印象はまだ残りやすい状況です。
設問9:一般的に「AIっぽさ」はどのような点に表れやすいと思いますか。(複数回答)

AIっぽさが表れやすい点は「構成の似通い」55.8%、「デザインの没個性」48.5%が上位でした。文章そのものよりも、企画構造や見せ方の均質化にAIらしさを感じている人が多く、表面的な表現より設計段階で差がつきやすいことを示しています。
設問10:AIで生成されたwebサイトはビジネス競合との戦いで勝てると思いますか。(単一回答)

AI生成サイトが競合に「勝てると思う」「やや勝てると思う」は合計62.6%で、完全否定ではない結果です。ただし「勝てると思う」は17.8%にとどまり、「やや勝てる」が中心のため、限定的には戦えるが絶対優位までは見込みにくい、という慎重な見方が主流です。
設問11:AIで生成したサイトやデザインは、成果面でどのような傾向があると思いますか。(単一回答)

成果傾向は「一定の成果は出る」58.9%が中心で、「期待以上の成果が出やすい」14.7%を大きく上回りました。AIはまったく成果が出ない存在ではないものの、突出した成果を生むより、一定水準まで整える用途として認識されているといえます。
設問12:AIで生成した制作物で、成果が出にくいと感じる項目はどれですか。(複数回答)

成果が出にくい項目は「問い合わせ獲得」42.3%、「資料請求獲得」37.4%、「購入率向上」34.4%が上位でした。集客よりもコンバージョンに近い指標ほど難しさが意識されており、成果責任が重い領域ではAI単独の限界が見られます。
参考クロス分析:成果の傾向+成果が出にくい項目

「一定の成果は出る」が中心である一方、「期待以上の成果」が大きく伸びるわけではありません。AIは土台づくりには使えても、コンバージョン成果に直結する領域では伸び切らないという見方が強いようです。
設問13:AIを活用すれば、専門知識や経験が浅くても成果の出るサイトを作れると思いますか。(単一回答)

「経験が浅くても成果の出るサイトを作れる」との回答は「強くそう思う」「ややそう思う」の合計で79.2%でした。AIがハードルを下げる認識は強い一方、後続設問では人のノウハウも重視されており、“一定水準までは可能だが、高い成果は別”という理解が背景にあると考えられます。
参考クロス分析:経験年数+知験が浅くても成果の出るサイトを作れるか

「未経験でも成果が出せる」とみる層は1年以上3年未満が中心で、比較的若手~中堅初期に前向きさが見られます。一方で「全く思わない」は10年以上が60.0%で、経験を積んだ層ほど“成果”の定義を厳密に見ている可能性があります。
設問14:AIを活用しサイト制作するうえで、人間側に必要だと思うスキルはどれですか。(複数回答)

人間側に必要なスキルは「現場の体験や実績」54.6%、「目的設定力」47.9%、「情報の取捨選択力」38.7%が上位でした。AI操作そのものよりも、何を作るか、何を残すかを判断する人間側の実務知見が重視されています。
参考クロス分析:成果の傾向+人間側の必要スキル

人間側に必要なスキルとして「マーケティング戦略の理解」「SEOの知識」「UIUXの知識」「アクセス解析力」などを挙げた層では、「期待以上の成果が出やすい」が相対的に高い傾向が見られます。AI活用の成果は、生成そのものより、戦略・評価・改善までつなげられる人間の能力で左右されることを示す結果です。
設問15:次のうち、AIだけで完結するとして任せやすい業務はどれですか。(複数回答)

AIだけで任せやすい業務は「ターゲット/ペルソナ設計の補助」43.6%、「ブランド訴求設計の補助」36.8%など、補助業務としての活用が中心です。完全委任ではなく、発想支援やたたき台生成としての期待が強い結果です。
設問16:次のうち、AIだけで完結するとして任せにくい業務をすべてお選びください。(複数回答)

一方でAIだけでは任せにくい業務は「ターゲット/ペルソナ設計」49.7%、「ブランド訴求設計」38.0%、「事業戦略設計」36.8%でした。Q16と並べて見ると、同じテーマでも“補助なら可、本決めは難しい”という線引きが明確です。
参考クロス分析:成果の傾向+AIに任せにくい業務

任せにくい業務として挙がる領域でも、「一定の成果は出る」が主流です。ただし「デザイン作成」「コーディング」「UIUX改善」などでは「成果につながらないことが多い」が相対的に高めで、仕上げ精度や検証を要する業務ほどAI単独の不安がにじみます。
設問17:サイト制作におけるAIの役割をどのように捉えていますか。(単一回答)

AIの役割認識は「一部業務の代替にはなる」48.5%、「補助ツールとして有効」37.4%が中心でした。「完全に人の代替になり得る」は8.0%にとどまり、多くは限定的代替か支援ツールとして見ています。
参考クロス分析:経験年数+AIは人の代替になりえるか

「AIは完全に人の代替になり得る」は3年以上5年未満が比較的高く、推進派が一定います。一方、「限定的な役割に過ぎない」は10年以上が高く、経験が深い層ほど慎重です。全体としては、経験年数が増えるほど絶対視せず、役割を切り分けて捉える傾向が見えます。
設問18:成果の出るサイト制作には、AIよりも人間のノウハウや成功体験実績が重要だと思いますか。(単一回答)

「成果の出るサイト制作には人間のノウハウや成功体験実績が重要」は、「非常にそう思う」「ややそう思う」の合計で85.9%に達しました。全体として、AIの価値を認めつつも、最終的な成果は人の知見に依存すると考える傾向が非常に強い結果です。
参考クロス分析:成果の傾向+人間の経験ノウハウ必要性

人の成功ノウハウが必要だと強く考える層ほど、「期待以上の成果が出やすい」と答える割合が高い点は示唆的です。AIだけで成果が出るというより、AIを使いこなせる人間が介在すると成果を押し上げられる、という認識が表れていると見られます。
設問19:サイトを「形にすること」と「成果を出すこと」では、AI活用に求められる条件は異なると思いますか。(単一回答)

「形にすること」と「成果を出すこと」でAI活用条件は「大きく異なる」「やや異なる」の合計で80.4%でした。制作物を成立させることと、成果を出すことは別物という認識が広く共有されており、本調査の主題と最も整合的な結果の一つです。
参考クロス分析:経験年数+「形にすること」と「成果を出すこと」は別物か

「形にすることと成果を出すことは大きく異なる」は1年未満と10年以上でも高く、初心者でもベテランでもこの差を感じやすい点が興味深い結果です。特に実務で成果責任を経験した層ほど、制作完了と成果達成を切り分けて見ていると考えられます。
まとめ
本調査からは、Web担当者はAI活用に対して総じて前向きであり、特に制作スピード向上や工数削減、コスト抑制といった効率面での期待が大きいことが確認できました。その一方で、AIが作る成果物には既視感、没個性、ブランドらしさの弱さ、訴求の浅さといった懸念が強く、実際に「AIっぽさ」を感じる人も大多数を占めています。
また、成果面では「一定の成果は出る」という評価が中心であり、AIがまったく使えないわけではない一方、問い合わせ獲得、資料請求、購入率向上など、コンバージョンに近い指標ほど限界が意識されています。この点は、AIが“形にする”ことには有効でも、“成果を最大化する”段階では人間の設計力や改善力が不可欠であることを示しています。
とくに注目すべきなのは、人間側に求められる力として、現場の体験や実績、目的設定力、情報の取捨選択力、戦略理解などが重視されている点です。回答者の多くは、AIを完全代替ではなく一部代替または補助ツールと捉えており、成果の出るサイト制作には人間のノウハウや成功体験が重要だと考えています。総合すると、AI活用によって内製化の裾野は広がる一方、競争に勝てるサイト、CVを生むサイトを作るには、依然として人間のスキルと判断が成果を分けるというのが結論です。

