ECサイトは実店舗とは異なり、顧客の顔を直接見られません。対面でのコミュニケーションがないため、どうしても、ひとりひとりの反応や会話からニーズを探り提案するということが難しくなります。
その反面、全国・全世界から顧客が集まり、数多くの顧客情報をデータとして蓄積できるというメリットがあります。このメリットを活かし、データ分析を通して顧客のニーズを探り、リレーションを深める施策がCRMです。
この記事では、ECサイトにおけるCRMの重要性や進め方、注意点を詳しく解説します。
1.ECサイトにおけるCRMの意義
商品Aを購入したユーザーに商品Bのクーポンを配信する、商品Cを定期購入したユーザーにステップメールを配信するなど、数多くのECサイトでCRM施策が行われています。
顧客ごとに最適なタイミングで最適な情報やオフォーを提供して継続的な関係性を構築しよう、というのがCRMの本質ですが、今なぜCRMが注目されているのでしょうか。
2019年5月に行われたエンパワーショップ株式会社の調査によると、国内ECサイトの数は270万件を突破し、2017年の189万件と比較しても43%増加と急速に増え続けています。
ECサイトが増える分価格競争が激しくなり、顧客もECサイトを価格重視で選ぶようになる傾向が見られます。一度購入したユーザーも他のECサイトに目移りすることが増えるため、リピーターになってもらいにくく、新規顧客獲得に奔走することになりかねません。
しかし、マーケティング用語には「1:5の法則」という言葉があり、新規顧客獲得には既存顧客に販売する5倍のコストがかかるといわれています。事業を拡大させるためには新規顧客の開拓も欠かせませんが、CRMにより既存顧客との関係性を強めた方が、コスト的にメリットが大きいのです。
また、優良顧客に育てることで中長期的に商品を購入してくれるため、LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が生涯で企業にもたらす利益)も高められます。ECサイトの売上アップのためには、CRMが欠かせない時代になってきているといえるでしょう。
2.ECサイトにおけるCRM施策の進め方
それでは、ECサイトにおいて実際にCRM施策をどのように行えばいいのでしょうか。進め方を4つのステップに分けて具体的に説明します。
ステップ1.顧客情報の獲得
CRM施策を実行するためには、まず顧客のデータを収集する必要があります。これまでのECサイトや店舗ごとの会員登録データ、営業など各部門が独自に管理していたデータを集め、顧客の閲覧履歴や購入商品、頻度、単価などの情報を一元管理できるようにします。
Excelなどで管理することもできますが、今はEC特化型のCRMツールも多いため、今後の活用を考えてCRMシステムを導入した方が良いケースが多いでしょう。
ステップ2.顧客情報の分析
次に、集めた顧客情報を分析して、セグメント分けをしていきます。
CRM分析には初回購入を行った新規顧客のうち、2回目の購入に進んだ顧客の割合であるF2転換率や、次回購入までの期間を分析する購入サイクルなど、さまざまな指標があります。これらの指標を分析して顧客のセグメント分けを行います。例えば、「A商品の初回購入者」「180日間購入がないユーザー」などです。このセグメント分けがCRMの効果を左右しますので、適切なセグメント分けが重要となります。
CRMにおける顧客のセグメンテーションについては『CRMの分析方法と活用事例~代表的かつ効果的な3つの分析方法~』で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。 |
ステップ3.アプローチ方法を決めて実行する
セグメント分けした顧客のどの層に対して、いつ、どんなアプローチをするのかを決定します。アプローチ方法は、メルマガ・LINEの配信やDMの郵送、クーポンプレゼントなど様々です。
継続的に商品を購入している優良顧客なのか、しばらく購入していない休眠顧客なのか、顧客のステータスによってアプローチ方法を工夫しましょう。
ステップ4.効果検証を行う
顧客へのアプローチを行ったら、効果検証も忘れてはなりません。メルマガの開封率やクーポンの利用率、売上、リピート率、単価がどれくらい上がったかなど、できるだけ細かく分析していきます。
効果検証することによって改善ポイントを見つけ、継続的にPDCAを回すことが重要です。
3.メルマガを使ったCRM施策とは
ECサイトにおけるCRM施策の代表的な手法がメルマガ配信です。メルマガといっても、リストの対象者に向けて一斉に同じ内容のメールを配信するのではなく、客一人ひとりのステータスにあわせて文章を変える必要があります。
例えば、商品Aを初回購入したユーザー向けには、商品の使い方やノウハウを教えるステップメールを配信する、1年以上再購入がない休眠ユーザー向けにはお得なセットを提案するというように、顧客状況に合わせたアプローチを行うところに意味があります。
多様化する顧客のニーズに合わせ、適切なタイミングで適切な内容のメルマガを配信しましょう。
4.ECサイトでCRM施策を進める時にしておきたいこと
CRMでは、企業が関わるすべての顧客データを、集積・管理することが大切です。ECサイトだけでなく、実店舗のデータやカスタマーサポートへの問い合わせ履歴など、あらゆる分野のデータを統合しましょう。
ECサイトしかない場合でも、商品購入データや会員情報、レビューといったチャネルごとに情報が分断されていると、CRMの効果が十分に発揮できません。様々な角度からユーザーの実態を浮かび上がらせ、ユーザー像を明確にする作業が必要です。
顧客一人ひとりに会員IDを付与したりIP情報を活用したりして、一人の顧客に関するデータを一箇所に集めて分析を行うことが重要です。
5.まとめ
ECサイトの数が増え、顧客との良好な関係を結びリピーターになってもらうことが難しくなってきた現代では、すでにユーザーとなっている既存顧客を優良顧客に育てるCRM施策の重要性が増しています。
CRMは、店舗や部門ごとにデータ管理が分かれていると効果を発揮しないため、一人の顧客は1つのデータと結びつけ、企業全体で一元管理することがもっとも大切です。データを有効活用し、顧客一人ひとりにあった施策を打つことで、優良顧客への育成を進めていってみてください。