化粧品ECで新規顧客を獲得するためのポイント|市場規模・成功事例を紹介

新興企業の進出が難しいと言われる化粧品EC業界。競争を勝ち抜くには新規顧客獲得のポイントを掴む必要があります。

本記事では化粧品ECの市況に加え、業績が頭打ちとなっている担当者が行うべきおすすめマーケティング施策を実例とともに解説します。

目次

1.化粧品ECの市場規模と業界のビジネスモデル

化粧品業界におけるECの市場規模は年々拡大してはいますが、他業界と比較するとまだ規模が小さいのが現状です。

化粧品業界の市場規模

引用:矢野経済研究所「化粧品市場に関する調査を実施(2023年)」

矢野経済研究所の調査によれば、2022年の化粧品市場規模は2兆3,700億円。コロナ禍によるインバウンド需要の落ち込みやメイクアップ化粧品の需要減で一時は多少の市場縮小が見られましたが、10年規模で見るとほぼ横ばいに推移しています。

化粧品市場の中では幅広い世代に利用されるスキンケア市場が最も大規模で、続いてヘアケア、メイクアップで市場の約85%を占めています。

市場拡大が見られるカテゴリ

国外では特に中国・韓国をはじめとするアジア系ブランドの躍進が顕著で、国内でも韓国・中国ブランドの化粧品を利用する人が若者を中心に増えている傾向です。

韓国ブランドの化粧品は体系化されたOEM/ODM製造プラットフォームが構築されているのが大きな特徴です。自社工場を持たずにアイデアやコンセプトを基盤に新たな商品を開発し、他社に生産を委託する業界構造が主流となったことにより、化粧品市場への参入障壁は下がったと言われています。(参照:JETRO「韓国化粧品が世界に躍進(2024年)」)

また、ここ数位で顕著に拡大しているのはメンズコスメ市場です。男性も美容への意識が高まり、基礎化粧品やメイクアップ化粧品を利用する層が増加しています。

引用:インテージ「ポストコロナでも成長を続ける男性化粧品市場(2023年)」

インテージの調査によれば、2017年以降毎年男性化粧品市場は右肩上がりに伸びています。2023年上半期の売上を2倍の1年分に換算すると、2022年の市場規模からさらに30億円拡大すると予測されます。

人口減少に伴い化粧品業界全体の売上は頭打ちになると言われていますが、近年広がっている男性向けスキンケア、コスメの需要には市場の再拡大が見込めます。

化粧品業界のEC化率

参照:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」

経済産業省が公開した2022年のデータでは、化粧品・医薬品ECの市場規模は8,552億円で、EC化率は8.24%です。

日本の産業全体のEC化率は9.13%と比較すると、化粧品業界は国内の水準よりやや低いと言えるでしょう。原因に関しては次項で解説します。

しかしここ数年はコロナ禍のEC体験がユーザのリテラシーを高め、それまで店舗でしか購入していなかった中高年世代もECを利用する選択肢を持つようになりました。よって現在はEC化率が着実に上昇しており、今後さらに高まっていくものと推測されます。

化粧品EC業界のビジネスモデル

化粧品ECのビジネスモデルは大きく分けて2つです。

 メリットデメリット
モール型多様な商品の中から選べる 知名度が低くても購入につながる可能性があるモール内でのキャンペーンが必要 利益率がDtoC型より低い傾向
DtoC型ブランディングや価格統制が可能 生産~流通にかかるコストを抑えやすい知名度・顧客満足度を上げるためのマーケティングにコストがかかる

①モール型

モール型はサイト内に複数ブランドの商品が出品されているECサイトを指します。現在は楽天、Amazonなどの総合通販サイトから@Cosme、iHerbなどの化粧品専門サイトまでさまざまな種類があります。

モール型のECサイトは、幅広い商品から比較・検討したい顧客にとってメリットの大きいビジネスモデルです。出店側もアクセス数が大規模なECモールを使って売り出せるため、自社の知名度が高くなくても、モール内検索から商品購入につながるチャンスが生まれます。

一方、モールを利用する分コスト面ではデメリットがあります。商品の質だけでなく単純に価格で比較されることが多く、検索時に表示されやすくするには定期的なキャンペーンが必要です。それに加えてモールの利用手数料がかかるため、利益率はDtoC型より低い傾向にあります。

引用:Qoo10公式ページ

近年はQoo10やSheinなどアジア系プチプラECモールが人気です。たとえば化粧品を中心にECモールを展開するQoo10はここ数年流通総額が年間20%~40%ペースで成長し続けています。

これらプチプラ系ECモールは、若者を中心とした低単価商品のニーズを捉えたEC事業を展開して成功を収めています。

②DtoC型

DtoC(D2C)は「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の略。自社の商品をモールや店舗などの中間業者を介さず直接顧客に販売する販売形態を指します。DtoC型のECは自社商品のみを扱うため、ブランディングや価格統制ができ、生産~流通にかかるコストも抑えやすいのがメリットです。

ただし、売上を出すには自社ブランドの認知度と直接サイトを訪れるユーザを増やすための取り組みが必要不可欠です。モールの利用手数料などがかからない分、リスティング広告を通じた宣伝やSNSマーケティング、検索エンジン対策(SEO)を行うためのコストが多くかかる傾向にあります。

 

2.化粧品ECにおける業界の課題

化粧品ECで成功するには、業界に存在するいくつかの課題点を認識し、正しい対処を取る必要があります。

店舗購入の需要が高い

化粧品は直接肌に触れるものであり、特にメイクアップ商品は直接色味を見て確かめたいと思うユーザがかなり多い傾向にあります。コロナ禍を乗り越えた現在でも「直接商品を試したい」「色味を確かめたい」というニーズは根強く、実店舗での販売が中心になっているのが現状です。

化粧品を販売するドラッグストアは全国各地無数にあるため、「購入できる場所がないからECを利用する」という需要もほとんどありません。高価格帯のブランド、いわゆる「デパコス」は店舗の販売員から直接アドバイスをもらって購入したいというニーズが強いため、こちらも実店舗中心になりがちです。

ECが普及する前に構築された店舗を中心とした既存のチャネルが充実していることがEC化率の伸び悩みを招く大きな一因になっていると言えるでしょう。

ちなみに先述したQoo10、SheinなどのプチプラECモールは国内では手に入りにくい国外ブランドの製品を低価格で販売することで売上を伸ばしています。

大企業の寡占

化粧品業界全体の市場シェアは、資生堂・コーセー・花王・P&G・ポーラ・オルビスの5社で全体の4割を占めており、上位10社までで約50%、残りの50%を2,990社でシェアを奪い合う半寡占状態になっています。

大手は豊富な資金を元手に幅広いマーケティング施策を行っており、知名度も高いため国内で幅広い支持を受けています。例えば業界1位の資生堂はテレビCMをはじめとするマス広告に加え、SNSやオウンドメディアなどのデジタル広告を融合させたマーケティング戦略を得意としています。

ただし近年は主に以下の要因により、新規参入が増加傾向にあります。

EC戦略に多くの資金を投じる大手、増え続ける競合との差別化と効率的なWebマーケティングが今後化粧品業界で生き残るための重要なカギとなるでしょう。

消費者トラブルの増加と法改正・規制強化

ECでの販売に対する信頼度が低いのも化粧品業界でECが浸透しない要因の一つです。上記で示しているように、消費生活センター等に寄せられた定期購入に関する相談のうち70%以上が化粧品関連のトラブルであることからもその事実が伺えます。

などの理由で消費者トラブルが絶えないことから、ECサイトでの購入をためらう人も少なくありません。ただしこのような流れを受けて2022年には特定商取引法が改正され、ECサイトの最終確認画面において、取引における基本的な事項について分かりやすく表示することが義務付けられました。

最終確認画面で必要事項が表示されていなかった場合、誤認を招いたとして契約の取り消しが認められたリ、罰則が科される可能性があります。定期購入サービスを導入する場合は法令を遵守し、トラブルを未然に防ぐ対策が必要です。

また、近年ではECモールでの模倣品販売や個人輸入の類似品販売が問題視されています。ECでの商品購入に抵抗感を持つ人も少なくないため、ユーザにとって安心感のある商品の提供・ブランディングが求められるでしょう。

検索エンジン対策の難易度が高い

化粧品ECの新規獲得にはSEO(検索エンジン)対策を含むWebマーケティングが重要です。しかし検索エンジンでは化粧品を取り扱う新規サイトが評価されにくく、これが新規参入における大きな壁となります。

日本ではGoogleが2017年に「健康アップデート」を行い、以降健康・医療コンテンツの質に対する規制が強くなりました。個人サイト・アフィリエイト等の順位は検索での順位が上がりにくく、信頼性が高いと判断された公的機関や大手ブランドのサイトが上位に上がりやすいと言われています。

ただしこれはあくまで傾向であり、きちんと予算をかけて対策に取り組めばSEOで成果を出すことも可能です。

ECマーケティングのコンテンツマネジメントサービス

ECマーケティング株式会社は、「確実に集客につながるコンテンツマーケティング」を提供しています。

ただ記事を納品するだけではなく、SEO観点を押さえたコンテンツで集客効果の最大化を実現します。

豊富なオプションプランがあり、御社に合わせたご提案が可能です。ぜひまずはお問い合わせください。業界に合わせてコンサルタント・編集者をアサインさせていただきます。

3.化粧品ECで新規獲得するためのおすすめマーケティング施策

化粧品ECで新規獲得を増やすには積極的なWebマーケティングが不可欠です。マーケティング施策は顧客のフェーズによって大きく「集客」→「接客」→「追客」に分けられます。

それぞれの段階で適切なマーケティングを打ち出すことでより効率的に新規顧客を増やし、売上を伸ばすことができます。それぞれのマーケティング施策を大手企業の取り組みとともにご紹介します。

集客(流入・アクセス)を増やす施策

新規顧客を増やすにはまず自社や商品の知名度を上げ、顧客にとって選択肢の一つとなりうるよう働きかけなければなりません。特にEC開始当初は流入数・アクセスを増やす集客施策に力を入れることで効果的にユーザ層を拡大することができます。

オウンドメディアでの発信

ポーラ・オルビスのブランド「ORBIS」ECサイト内に設置されている「マガジン(美容情報・読み物)」

検索エンジンなどを通じてオウンドメディアにたどり着いたユーザは、同じサイト内にある商品ページにアクセスしやすくなります。そのため商品やサービスに関連するコンテンツを自社サイトで発信するオウンドメディアの運用は、特にDtoC型のECサイトと相性が良い施策です。

SEO対策をしっかり行えばブランド・商品の認知度に関係なくアクセスが見込めるため、認知度拡大には最適です。

先述したように化粧品業界は検索エンジン上の規制が厳しいのがネックですが、「大手企業・既存の有名ブランドでないとSEOでの集客は不可能」とは言い切れません。信頼性のあるコンテンツをたくさん発信してドメインパワーを高めれば、新興企業・ブランドにも勝機はあります。

化粧品ECではコンテンツの信頼性を証明するために医師・専門家の監修をつけるのがほぼ必須です。薬機法・景品表示法に違反しないよう発信内容に注意しながらユーザの役に立つ情報を発信すれば、おのずと新規獲得につながるでしょう。

UGC戦略

UGCとは「ユーザ生成コンテンツ」のこと。企業が自ら発信するだけでなく、顧客がリアルな目線で商品の情報を発信することで信頼性をアピールすることが可能です。UGC戦略は施策の幅が広いため、主な2つをご紹介します。

【UGC戦略①口コミマーケティング】

ファンケルのECサイト商品ページ下部。会員登録すればだれでも商品の口コミを投稿することができる

直接商品を見たり試したりすることができないECでは実際に商品を試した人の声を参考にするユーザが多いため、口コミサイトや自社ECの口コミは非常に重要度の高いコンテンツです。

自社ECの場合、商品ページに利用者の声やユーザレビュー欄を設置することでユーザの満足度が上がるでしょう。また、口コミサイトの評判をチェック・分析すればニーズの把握に役立ちます。

【UGC戦略②SNSマーケティング】

花王のコスメブランド「プリマヴィスタ」公式Xのポスト

SNSのUGC戦略も厳密には口コミマーケティングの一つですが、戦略展開が一般的な口コミマーケティングと大きく異なるため別で紹介します。

近年はSNSを通じて情報を収集する人が多いため、SNSマーケティングが特に重要となっています。ハッシュタグを使ったプレゼントキャンペーンなどを行い、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSでの発信を促すことで、UGCの増加を促すなどの施策が挙げられます。

自社商品・アカウントの知名度が低い場合はSNS広告の出稿から始めるのがオーソドックスな戦略です。認知度拡大を狙う場合は企業アカウントでの発信だけでなく、インフルエンサーマーケティングと組み合わせるのもおすすめです。

Web接客ツールの活用

コロナ禍で店舗を利用できなくなった2020年以降、多くの主要ブランドがオンライン上で接客を行う各ツールを導入しました。

Web接客ツールはオンラインでの購入検討の材料を提供し、ユーザの悩みや疑問を解消することで顧客満足度を向上させることが可能です。またデータ収集によって顧客のニーズを正確に掴み、マーケティング施策に応用できるというメリットもあります。

オンラインカウンセリング

コーセーのブランド「DECORTÉ」のビデオカウンセリングサービス

専門スタッフが店舗にいるときと同じように商品選びや使い方についてアドバイスします。

顧客と1対1でリアルタイムのコミュニケーションを取ることでパーソナライズされた接客ができるようになり、満足度や売上の向上につながります。現状は店舗での接客がメインですが、今後はオンラインでの接客が新たなビジネスチャンスになる可能性もあります。

また近年は美容皮膚科・美容外科のオンライン診療がさかんで、オンラインでカウンセリングを受けるだけで皮膚科の治療薬をもらえるサービスの人気が高まっています。日本では現在「オンラインで相談」という選択はあまり一般的ではありませんが、今後は美容医療業界から流れ込む形でオンラインカウンセリングの需要が急増する可能性はありそうです。

チャットボット・チャットサポート

ポーラ・オルビスのブランド「POLA」のECサイト。下部のポップアップからいつでもチャットサポートが受けられる

専門カウンセラーのサポートよりもコストを抑えたいのであればチャットボットもしくはスタッフによるチャットサポートの導入がおすすめです。

24時間いつでも問い合わせに対応でき、迅速なサービス提供が可能になります。

ライブコマース

資生堂のライブコマース「Find Beauty Live」

ライブコマースはSNSや自社サイトでライブ配信をしてユーザと直接コミュニケーションを取りながら販売する施策です。こちらもコロナ禍で急速に浸透しました。

動画を通じて商品の魅力を伝え、顧客の疑問に答えることで店舗での接客に近いコミュニケーションが可能になります。

資生堂の「Find Beauty Live」に挙げられるように自社サイトのシステムを利用するだけでなく、InstagramなどSNSのライブ機能やライブ配信アプリを利用することも可能です。特に新しく立ち上げたばかりのブランドはSNSなど既存のプラットフォームを利用した配信がおすすめです。

追客(CRM、リピート施策)

「新規獲得のためにリピート施策を行う」というと矛盾を感じるかもしれませんが、化粧品業界においてはCRMをはじめとするリピート施策が特に重要です。

新規獲得施策に力を入れていても、2回目の購入に引き上げられなければ新規顧客を取り続ける自転車操業になります。特に化粧品は一度の購入における顧客単価が低いため、既存顧客を掴めない商品・施策は長続きしません。

それゆえ「一度購入した人がリピーターになって継続的に利益をもたらす」つまりLTVの向上を意識した施策の展開が必要になってきます。

例えば店舗中心の高単価化粧品「デパコス」は店舗で直接カウンセリングを受けて初回購入した後、リピート時にネット注文するケースを想定した施策が重要になってきます。

有名デパコスブランド「イヴ・サンローラン・ボーテ」のオンライン特典

上記のように一定以上の購入で送料を無料にする、他の人気商品のサンプルを提供して実際に試してもらうのも有効な施策の一つです。

既存顧客に対する的確なアプローチで利益を出せば、おのずと新規獲得施策に割く予算が増えることになります。新規の自社ECであればまずはアクセスの母数を増やすのが先決ですが、一定数を超えたら顧客育成シナリオをイメージしたリピーター施策を積極的に行うべきでしょう。

CRM

資生堂が2022年にスタートした会員サービス「Beauty Key」のアプリ画面。取得した会員情報を一元管理し、マーケティングなどに応用する

CRM=顧客管理ツールのこと。氏名やメールアドレス、継続率、購入単価などの顧客データを一元管理し、購入履歴や顧客の属性をもとにアプリやメルマガでの発信をおこない、リピートにつなげることができます。また、既存顧客の属性を分析することで新規顧客のターゲット層を絞りやすくなり、集客・接客施策の精度が向上するというメリットもあります。

店舗展開を行っている企業では、店舗で商品を購入した顧客情報を一元化することが重要になってきます。

CRMについて詳しくはECマーケティング所属の専門家・伊藤 肇が執筆した「ツール提供だけではない、おすすめのCRMコンサル会社7選」をご参照ください。

定期購入

ファンケルの定期購入サービス。ファンケルは売上の約5割が通信販売を占めることもあり、定期購入サービスに力を入れている

送料が無料になる、ポイントがたまるなど商品を安く購入できる条件がつく定期購入は、ユーザにとってもメリットの大きい化粧品業界必須のマーケティング施策といっても過言ではありません。

しかし先述したように定期購入は消費者トラブルが多く、ユーザが不信感を抱きやすい部分でもあります。受け取りのタイミングを選べるようにする、商品変更を可能にするなど、ユーザに配慮した選択肢を設けた安心感のある運用が求められます。

4.化粧品ECで成功するためのポイント5選

化粧品ECで新規顧客を効率的に獲得し、成功するにはここまでご紹介してきたマーケティング施策の実行が不可欠です。施策を実行するうえで忘れてはならない重要なポイントは以下の通り。

①店舗など他チャネルとの連携を強める

ライブコマース・SNSマーケティング・CRMなどの施策を通じて、オンラインとオフラインの施策を組み合わせるオムニチャネル化を進めていくことが重要です。

特に化粧品業界は店舗の比重が大きいため、店舗での購入履歴やユーザ属性などの情報をECに生かすなどして細分化したニーズに対応するのが有効です。店舗で購入する顧客の中には、SNSなどオンラインでの口コミやECサイトの情報を参考にする人も少なくありません。

(例)KATEのリップモンスター

2021年に発売し、発売からわずか半年で累計出荷数が120万本を突破したKATE「リップモンスター」は、SNS展開に成功した代表的な化粧品です。コロナ禍で口紅のニーズが減少していた中、「マスクをつけても落ちないリップ」としてSNSの口コミから大ヒットしました。

ユーザの多くはSNSを通じて商品を知ってドラッグストアなどの店舗で購入しており、発売開始直後は店舗での売り切れが続発しました。オンラインでの施策が店舗購入につながった一つの成功例だと言えるでしょう。

コールセンターを通じたデータ収集も重要

コールセンターを利用した通信販売を行っている企業の場合、電話でのコミュニケーションを通じたデータ収集を行うことでマーケティングの精度を容易に上げることができます。

弊社が過去に取り扱った事例では、ECサイトでの返品率を改善するためコールセンターにヒアリングを行ったところ、「肌がピリピリする」という理由で辞めている人が多いことが判明しました。その後ECの商品ページにあらかじめ注意事項を記載したことにより、返品率が劇的に改善した経験があります。

店舗、コールセンターなど既存のチャネルと情報を共有しあい、データの一元化を進めることで、商品全体の売上アップにつながります。

②コンテンツの質を高める

特にSNSとオウンドメディアの展開では顧客のニーズを掴んだ質の良いコンテンツの発信が非常に重要です。

消費者が魅力を感じるような商品力を有していることが大前提ですが、良質な商品は適切なマーケティングを行えば売上は確実にアップします。自社商品の魅力・他社と比較した際に有利なセールスポイントを的確に捉え、ユーザの心を掴むようなコンテンツを制作することが重要です。

>>ユーザとの関係性を強化!ロイヤルコンテンツ制作についてはこちら<<

③既存顧客を意識した施策を行う

1回の購入における顧客単価が低い化粧品業界におけては、的確なリピーター施策を行うことが必須条件です。

会員にメルマガを配信する、定期購入を促すなどの施策はもちろん、的確なマーケティングを行うために顧客のデータからLTVを算出することが重要になってきます。

継続的な購入によってLTVが上昇すればその分広告やコンテンツマーケティングに費やせる予算が増額し、新規顧客を獲得する機会が増えることになります。

→LTVを最大化!顧客データを分析するCRMコンサルティング

顧客のニーズを分析する

顧客のニーズを把握するにはABテストやユーザインタビューといった施策を行うといいでしょう。調査によって顧客のニーズを的確にニーズを掴むことで、リピーターだけでなく新規獲得にも効果が見込めます。

④インバウンド需要を狙う

日本国内にも一定の需要はありますが、今後は少子化によって市場規模の縮小が見込まれています。さらなる売上拡大を狙うのであれば、海外進出を視野に入れるのも一つの手です。

ECの多言語対応、海外のニーズ分析などを行うことで、ターゲット層拡大が期待できるでしょう。

引用:資生堂「統合レポート2023」

例えば業界1位の資生堂はインバウンド戦略にも積極的で、2023年時点で売上高の77.8%は国外です。

⑤ターゲティングを行い、顧客像を共有する

施策の方針を固める前に顧客のペルソナとコンバージョンシナリオを社内で共有することは非常に重要です。集客・接客・追客いずれのフェーズにおいても自社が想定している顧客の人物像=ペルソナ購入にたどり着く過程=コンバージョンシナリオが明確化されていないとマーケティング施策がまとまらず、的確なアプローチができません。

ペルソナ設計、コンバージョンシナリオの作成などを通じて顧客像を具現化、社内で共有することで訴求ポイントが明確になります。マーケティングに携わる全員が同じビジョンを持つことが最終的な新規顧客・売上増につながっていくのです。

5.化粧品ECの成功事例~大手企業編~

大手企業はテレビの通販番組や店舗展開で積み上げてきた豊富な顧客データと潤沢な予算で幅広いマーケティングを展開しているのが特徴です。

①新日本製薬:ターゲットの細分化で世代に合った戦略を展開

化粧品業界の通販売上高ランキング3位の新日本製薬は売り上げの9割以上がECを含む通信販売。テレビなどのマスメディアを通じたマーケティング戦略により、主力商品である「パーフェクトワン」シリーズを大ヒットさせたことで知られています。

以前はコールセンターでの売上がメインでしたが、EC専門の部署を設置してコールセンターと連携した戦略を展開。戦略転換後のEC売上が前年同期比で18.5%増加しました。

引用:新日本製薬「2024年9月期第1四半期 決算補足説明資料」

新日本製薬の特徴はターゲットユーザを区分分けし、「シニア世代」「ミドル世代」「ミレニアル世代」「インバウンド」4つの区分ごとにそれぞれ異なる中長期戦略を展開している点です。

これまでのメインターゲットである「シニア世代」「ミドル世代」は豊富な購買データを利用してデータベースマーケティングと新商品の開発を行い、LTVの引き上げと新規獲得を進めています。

その一方、30代までの「ミレニアル世代」に対しては若年層向け新ブランド「パーフェクトワン フォーカス」を展開し、SNSを活用したデジタルマーケティングを行っています。

過去には人気男性タレントをCMに起用した結果Instagramのフォロワーは開始5ヶ月で55倍に増加し、ミレニアム世代の新規顧客が前月比2倍に急増するなど、大きな効果があったそうです。

②ファンケル:DXを活用したマーケティング

ファンケルは現在化粧品業界で5位の売上高を誇り、24年3月期の売上高が前期比8%増の1,115億円を見込んでいる成長中の企業です。ITを活用して通信販売、店舗販売両チャネルを融合させることで顧客との活発なコミュニケーションを実現しているのが同社の大きな強みだと言えます。

顧客データ分析により、通販・店舗両方を利用している顧客はどちらか一方のチャネルを利用する顧客と比較して継続率3倍、年間購入金額3倍であることを明らかにしてマーケティングに生かすなど、データに根差した効果的な戦略策定を行っています。

またチャネル活用とDX化の一環で2018年から店舗システムの全面見直しを実施し、Web/店舗/コールセンター全てのチャネルにおける顧客データを横断的に活用できるようになりました。

さらにコロナ禍以降は通販・店舗アプリを統合し、専用アプリ「FANCLメンバーズアプリ」をリリース。パーソナルメイクレッスンやAI(人工知能)を使った肌診断などがアプリ内で完結できるようになり、サービスの利便性が高まりました。

ファンケルの例では、既存顧客のデータ活用と戦略的なブランディングが成功を導いたと考えられます。

6.化粧品ECの成功事例~新興・中小ブランド編~

大手企業は豊富な資金を利用して幅広いWebマーケティング施策を実施することができますが、新興・中小企業の場合は限られた予算のなかでターゲット層や施策を絞り効果的にマーケティングを行う必要があります。

裏を返せば、大手企業の半寡占状態に見える現在の市場でも、需要を捉えた正確なマーケティングができれば成功につながる可能性があります。実際の成功例を見ていきましょう。

①OSAJI:Instagramを活用したコラボ商品で注目度高まる

OSAJI(オサジ)は「敏感肌でも使える化粧品」というコンセプトを前面に押し出したニッチな商品展開が人気を博している化粧品ブランド。2017年に日東電化工業株式会社の一事業として創設されたのち、順調に成長を遂げて2023年には株式会社OSAJIとして事業分割されました。

リリース当初なかなか知名度が上がらなかったOSAJIが注目を浴びるきっかけになったのは、ヘアメークアップアーティスト・草場妙子氏とのコラボ商品発売でした。知名度のあるインフルエンサーとコラボすることにより、ブランディングと同時に知名度を上げることにも成功しました。

2018年当時のInstagram投稿

以降Instagramを中心に著名人とのコラボや商品の宣伝を行い、売り上げは右肩上がりに上昇。2024年7月現在はInstagramのフォロワー数は12.7万人と影響力の大きいアカウントになっています。

尖ったコンセプトを前面に押し出したニッチブランドの成功例だと言えるでしょう。

②株式会社I-ne(BOTANIST、YOLU):UGCを利用したブランド戦略でバズ商品連発

ヘアケア業界でバズ商品を連発している新興企業I-ne(アイエヌイー)。2015年発売のブランド「BOTANIST(ボタニスト)の大ヒットを機に売上が爆増し、2020年には東証マザーズ市場へ新規上場して拡大を続けてきました。

BOTANISTに続いて2021年に発売したYOLUもSNSを中心に口コミが広がりヒット。当初はECを中心とした商品展開でしたが、BOTANISTのヒット以降は店舗での商品展開も行っています。

BOTANIST、YOLUなどの商品が次々とバズっているのは口コミを広めるUGC戦略の緻密さによるところが大きいと言えます。

I-neはBOTANISTのローンチ時から一貫して美容へのアンテナが強い「イノベーター」「アーリーアダプター」をターゲットとして戦略を展開し、口コミを通じた「バズり」で商品の認知度・好感度を上げて幅広い層に購入してもらえる仕組みを作っています。

YOLUのローンチにあたってはSNS施策を二つに分類。商品の機能性を伝える「モノ軸」とインフルエンサーからの発話で知名度を上げる「ヒト軸」両軸からアプローチする戦略を展開しました。

引用:MarkeZine「好感認知を広げて店頭購入につなげる!美容商材マーケター必見の最新SNSマーケティング」

並行してSNS広告で知名度を上げて「人気商品」というイメージ付けをしていくことで、若者層を中心にSNSで話題が広まりました。購入者の増加に比例して自然とUGCも増加していき、さらに話題性が向上していきました。

商品の知名度を上げ、新規顧客の心を掴むことに長けたコンテンツ戦略を展開する企業だと言えるでしょう。

③株式会社アクシージア:中国市場をターゲットに越境ECを展開

アクシージアは2021年に東証マザーズに上場、2023年2月にプライム市場へ上場し、2024年7月には前年比15.5%の売上高を記録するなど成長を続けている企業です。

同社は国内ではなく中国にターゲットを絞り、各ECプラットフォームへの出店やSNSでの発信などを精力的に行ってきました。その結果、主力商品である「AXXZIA」「AGtheory」をメインに中国EC市場で大きく売上を伸ばしています。

中国化粧品市場が日本と大きく違うのは、天猫・Douyin・REDなどのアプリを通じたライブコマースの視聴が当たり前になっている点です。アクシージアもライブコマースへの投資を積極的に行い、知名度を上げていきました。

2021年には中国最大のインフルエンサー「李佳琦」とコラボしたライブコマースを配信し、累計視聴者数2,730万人を記録。同社のメイン商品であるエッセンスシートの予約販売数は過去最高をマークしました。

7.まとめ

日本の化粧品市場はいまだ店舗重視でEC化率は比較的低い傾向にあるものの、顧客リテラシーの変化などにより今後ECの市場は拡大していくでしょう。

新規顧客を効果的に集めるためには、ユーザの需要を的確につかんだマーケティング施策を展開することが最も重要です。自社商品の魅力を伝えるコンテンツの制作、データの一元管理による一貫した戦略実行などを行うことでECサイトの売上は改善するでしょう。

ECサイトにおける新規顧客獲得にお困りの方はぜひECマーケティングにご相談ください。

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この記事を書いた人

Webコンサルタント
広告代理店にてメディア運営・SEOディレクション・Web広告運用を経験。
現在はコンテンツSEOとWeb担当者向けメディア『Webly』の編集を担当。

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