すでに確立されているマーケティング手法であるCRMが、改めて脚光を浴びています。現在、それを実現するためのCRMシステムは数多くあり、導入を検討している企業も少なくないはずです。
そこで今回は、CRMシステム導入によるメリット・デメリットと、実際に導入する前に確認すべきポイントについて解説します。
CRMシステムは、BtoC向け、BtoB向けで、若干目的や使い方が違いますが、今回はBtoB向けのCRMシステムについて解説します。
1.CRMシステムとは
CRMシステムの「CRM」とは「Customer Relationship Management」の略であり、日本語では「顧客関係管理」と翻訳されます。既存顧客との継続的な関係性構築のために行うマネジメント方法のことです。
簡単に言うと、顧客に対して有益な情報を提供して、顧客獲得や顧客からの再購入を促進するための手法です。
顧客のニーズは多様化しているため、顧客の部署、役職などの属性から抱えている課題などの現状によって、顧客の興味関心ごとが違ってきます。そうなると、情報発信する場合、すべての顧客に同じ情報を配信するだけではなく、顧客の属性ごとに発信する情報を使い分ける必要があります。
そうした顧客ごとに配信する情報を出し分けたり、顧客ごとの分析を行ったりするITツールをCRMシステムと呼びます。
さまざまな業種に活用でき、顧客情報の管理・分析やメール配信によるマーケティング、セキュリティ機能など多岐にわたる機能を備えているため、顧客とのリレーション強化にうってつけのシステムです。
2.CRMシステム導入の5つのメリット
CRMシステムを導入することで、以下に示す5つのメリットを得られます。
- 顧客管理を統一して全員で共有できる
- 顧客ひとりひとりに合った情報発信ができる
- 業務を効率化できる
- マーケティングに活用できる
- 顧客満足度の向上につながる
ここでは、これらのメリットについて順に見ていきましょう。
顧客管理を統一して全員で共有できる
データ化された顧客情報をシステムで一括して管理するため、担当営業の離職や支店の増設によって顧客情報が引き継がれないといった事態を防ぐことができ、スムーズな引継ぎができます。
また、システム上にある情報を社員が自由に閲覧できるため、簡単に社員同士で情報を共有することができます。担当者の欠勤で代理対応が必要な時や、急な担当替えが起こったときでも、顧客のデータや過去のやり取りを即座に確認できるのは大きな魅力のひとつでしょう。
顧客ひとりひとりに合った情報発信ができる
CRMシステムに顧客の属性、購入履歴、過去の会話内容などを登録しておくことで、顧客の情報を分析して可視化し、顧客ひとりひとりのニーズに合致した、適切なタイミングで提案を行えます。
業務を効率化できる
さまざまな種類があるCRMシステムの中には、商談中案件の進捗情報をリアルタイムで管理できるものがあります。
それだけでなくタスクやスケジュール管理も同時に行えるため、今自分が何をすべきかをシステム上で判断、提示してくれるため、今までタスク調整に割いていた時間を他の業務に振り分けることができ、業務の効率化が期待できるでしょう。
マーケティングに活用できる
CRMシステムでは、個別の顧客情報の閲覧以外にも、年齢や住所といった各情報からセグメント分けとそれに対する分析ができるため、社内でマーケティング戦略を立てる際にも非常に役立ちます。
CRMシステムというと社員の営業支援ツールというイメージがありますが、同時に会社全体の意思決定にも活用できるのです。
顧客満足度の向上につながる
CRMシステムを利用すれば、顧客ごとの属性や購買履歴などに合わせて、迅速できめ細やかなフォローを行うことができます。顧客に対して常に適切な対応が取れるため、顧客満足度の向上と、自社の製品やサービスの常連・ファン化が期待できるでしょう。
3.CRMシステム導入の3つのデメリット
CRMシステムの導入には、5つの大きなメリットがあると共に、以下の3つのデメリットもあります。
- ランニングコストがかかる
- CRMシステムの定着まで時間がかかる
- 効果が実感できるまで時間がかかる
ここでは、これらのデメリットについて、順に解説していきましょう。
ランニングコストがかかる
CRMシステムを外部から新たに導入する場合は、初期費用や運用コストが掛かることは避けられません。
CRMシステムを円滑に運用するためには、システムの分かりやすい使用方法のマニュアル作成や、社員への研修など、システムの管理・運用に人手や時間を割く必要があります。また、長期間運用していけば、そのうちシステムのアップデートも必要になるでしょう。
CRMシステムには大きなメリットがありますが、全てのケースで十分な効果が得られるとは限りません。
提供されているCRMシステムには、さまざまな仕様や機能、料金体系があるため、まずは費用対効果を十分に検討してからツールを選びましょう
CRMシステムの定着まで時間がかかる
今まで社員が各自でエクセルなどを使用し、独自の方法で顧客データを管理していた場合、CRMシステムへの移行がスムーズにできないケースも少なくありません。
特に、システムの操作が複雑で分かりにくいと敬遠されやすくなるため、できるだけ簡単に使えるようにカスタマイズし、社内でのサポート体制も事前に整えましょう。
効果が実感できるまで時間がかかる
CRMシステムは即効性が低く、Web広告などとは違いすぐ効果がでるものではありません。
元々、CRMシステムの目的自体が優良顧客の育成や維持、顧客満足度の向上にあるため、社内でシステムが定着するまではなかなか効果が実感できないことも多いのです。
しかし、社員がCRMシステムに慣れ、十分なデータが蓄積されるようになれば、成果も出やすくなります。そのためには、社員個人だけではなく、リーダーや経営者層も積極的に活用し、意識付けすることが重要です。
4.CRMシステム導入にあたって大切なポイント
最後に、CRMシステムを導入する際に注意するべきポイントを3つ解説します。
導入目的を明確にする
どのような戦略を立てる時でも同じことですが、施策を行うにあたっては最終的な目的を明確に定めなくては、最大の効果を得ることができません。
それぞれの企業によって抱えている課題は異なるため、まずはCRMシステムの導入により何を解決したいのか、なぜCRMシステムでなければならないのかを熟考し、結論が出てからツールの選定に移りましょう。
運用体制を整える
これまでに馴染みのないものを導入する際は、どのようなシステムでも定着しづらいものです。
ただ漫然と横並びでシステムの運用をスタートするのではなく、CRMシステムの必要性を理解しているリーダーを立てた運用チームを作り、丁寧に導入プロジェクトを進めましょう。
使いやすいツールを選ぶ
現在販売されているCRMシステムは何種類もあるため、その中から自社にとって最適なツールを選択することが重要です。
自社が参考にしたい指標を可視化できるのか、社員が持つITリテラシーに照らし合わせても運用していけそうかを比較検討して、CRMシステムの機能や仕様を確認しましょう。
CRMシステムを活用し、顧客とのリレーションを強化するためにはCRM分析が必須です。『CRMの分析方法と活用事例~代表的かつ効果的な3つの分析方法~』で詳しく解説しています。 |
5.まとめ
社内で顧客情報を簡単に共有でき、マーケティング戦略にも活用できるなど、メリットも大きいCRMシステムですが、コストがかかり、システムの定着や効果が表れるまでに時間が必要といったデメリットもあります。
CRMシステムの導入を考えるならば、まずは自社に必要なシステムか、導入してどのような結果を得たいのかを明確にした上で、しっかりと運用体制を整備してから利用しやすいツールを導入しましょう。